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情報☆キック
株式会社えんぶ が隔月で発行している演劇専門誌「えんぶ」から飛び出した新鮮な情報をお届け。
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(雑誌『演劇ぶっく』は2016年9月より改題し、『えんぶ』となりました。)
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【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第148回「複合商業施設にある劇場」

現在上演中の劇団☆新感線「天號星」東京公演は、劇団にとっても私にとっても初めての劇場となるTHEATER MILANO-Za。今年の春にできたばかりの新しい劇場です。新しいからとっても綺麗。席数は約900席と中劇場サイズですが、その分舞台と客席が近くて迫力があります。ちょっと座席が貧弱ではありますが、オープン当初よりもクッションが一枚追加されておりまして座り心地が若干改善されておりますよ。

さて、そのTHATER MILANO-Zaが入っているのが今年の春に竣工した東急歌舞伎町タワーです。噴水をイメージにした水色の高層ビルでして、劇場以外にも映画館やライブハウス、ホテル、フードコート、ゲームセンターなど、様々な施設が入った複合商業施設です。
ちなみにこの東急歌舞伎町タワーが建っているのは以前には映画館「新宿ミラノ座」があった土地でして、その名称を受け継いだ劇場名になっているというワケです。

最近ではこういった複合商業施設に劇場が入っている事が増えてきました。特に東京や大阪などの大都市では、中〜大劇場は(規模の差こそあれ)複合商業施設内にある場合がほとんどです。これがねえ、色々と面倒くさい事態を招いたりするのですよ。

一番困るのは搬入・搬出が大変なコト。舞台設営には大きなセットやたくさんの照明・音響機材などを搬入しなくてはなりません。地方の大劇場などだと巨大な搬入口に直接トラックを乗り付けて、迅速に搬出入ができます。大きな屋根があったりすると雨の日でも楽になります。舞台面も一階部分にあったりして、搬入したらそのまま設営に入れたりします。
しかし、複合施設の中に劇場がある場合にはなかなか大変なコトになります。もちろんその施設の設計にも寄りますが、大抵の場合は舞台面が上階にあるので一々エレベーター(リフト)で上げなくてはなりません。何度も何度も出したり入れたりしながら搬入しなくてはなりません。
また、施設によっては劇場専用のエレベーターがない場合だってあるのです。となれば他の業者さんの搬入と相乗りとか、交代交代での使用とか、これがまた時間の掛かる事になったりもします。

無事に舞台設営ができたとしても、まだまだ苦労があります。施設によっては同じ建物内にオフィスや美術館がある場合がありまして、あまり大きな音を出すと苦情が来たりするのです。いや、そんな劇場は数少ないのですが、ほら、新感線って音がデカいじゃない? だから音量だけでなく振動でもご迷惑をお掛けしてしまう場合があるのです。誠に申し訳ありません。
毎日劇場に通う時にもちょっとした面倒もあったりします。劇場専用の楽屋口がある場合なら良いのですが、入口が他のテナントさんと共用の場合もあったりしましてね。エレベーターが物凄く上の階まで行ってしまっていたりすると中々帰ってこなくてヤキモキしたりします。
入口にも厳めしい警備員さんが立っていたりしてね、中々に威圧感があったりします。昔、地方のある劇場が小売店の並ぶフロアの奥にありましてね、毎日退出時には簡単な持ち物チェックをされた事もありました。

もちろん、お客様目線でも色々と不便なこともあるかと思います。エレベーターやエスカレーターでしかアクセスできないと意外と時間が掛かるから心配だとか、ちょっとロビーが狭めだとか、終演時に混み合うとか、まあ色々です。それほど広くない敷地に様々な商業施設を詰め込んでいるからしょうがないっちゃあしょうがないんですけども。

そんなこんなで複合商業施設の中に劇場が入っていると何かと大変なんだよと言うお話でした。もちろん、複合商業施設だからこその利点も多くありますよ。まずは立地が良い。駅前にドーンと建ってたりします。上階にあったりするとロビーからの景色も良かったりしてね。皆様もついでにお買い物や食事をしたりもできて便利でしょう。
ただ、地方に旅公演などに行って、劇場専用の建物に入っている大きな劇場で公演をしたりすると、これがまた気持ちいいんですよ。とにかく全てがゆったり作られていて安心します。ロビーがムダにデカいとか、吹き抜けがやたらと高いとかね。更に歴史を感じられる建物だったり、搬出入も楽屋出入りも簡単だったりするところも魅力です。
ただまあ、ちょっとアクセスの悪いトコロにあったり、周りにコンビニがなくて困ったりするのはご愛敬ですけどね。

THATER MILANO-Zaロビーから見た新宿副都心方面。手前下が西武新宿駅。電車も一杯見られるから鉄分多めの方にもオススメです。

プロフィール

粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み

【出演予定】
2023年劇団☆新感線43周年興行・秋公演
いのうえ歌舞伎『天號星』
9/14〜10/21◎THEATER MILANO-Za(東京)
11/1〜20◎COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール(大阪)

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