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情報☆キック
株式会社えんぶ が隔月で発行している演劇専門誌「えんぶ」から飛び出した新鮮な情報をお届け。
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(雑誌『演劇ぶっく』は2016年9月より改題し、『えんぶ』となりました。)
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【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第149回「神棚と修祓式」

この11月は劇団☆新感線「天號星」の大阪公演です。会場は今春に続いて二度目となるCOOL JAPAN PARK OSAKA WWホール。ワンフロア客席で幅も奥行きも広くなりますから、ギュッと濃縮された東京公演会場とは違う感じになるかもしれません。しかし、ワンフロアなので客席通路を使用した演出を余すところなく全席からお楽しみ頂けますよ。ここだけの話ですが、移動距離が増えていますってさ。

さて、今回は皆様に意外な事実をお伝えしたいと思います。そりゃもう驚愕の事実です。予想外すぎてビックリしますよ。
それは! ええと、それは「多くの劇場の楽屋には神棚がある」という事実です。歴史ある老舗の劇場はもちろんですが、最新設備を備えた近代的でオシャレな劇場でもそうなのです。ビックリした? え、そうでもない? そっかー。
日本に於ける演劇というのは古くは神への奉納という側面もあり、演劇と神様の関係は意外と深かったのです。ですので、劇場に神棚が備えられている場合が多いというワケです。もちろん全ての劇場というワケではありませんが、ある程度の規模がある劇場ならば神棚がある可能性が高いです。

劇場の神棚は、大抵の場合には楽屋口を入ったスグの所、ちょっと高めのトコロにある場合が多いですかね。歌舞伎などが行われるような老舗の劇場の場合には、楽屋エリアに入ってスグの所にある頭取部屋(とうどりべや)前の着到版の上にあったりします。要するに舞台関係者が劇場に入ってまず目にする場所にあるというワケです。
しかし、その神棚に対する対応は人それぞれです。神道の作法に則って二拝二拍手一拝をする人もいれば、頭を下げる人、目礼だけの人、あるいは全く何もしない人まで様々です。別に強要されているものでもありませんので、人それぞれで構わないのです。
もちろんカンパニーによって、あるいは演目によって神棚に対する対応はまちまちです。ですが、劇場の神棚に対しては各人それぞれの方法で敬意を払っているように思います。

ただし、国公立の劇場の場合には神棚はほぼありません。神道も「特定の宗教」という括りに入ってしまうために、国公立の劇場には常設の神棚は備わっていない場合が多いのです。あと、小劇場にも少ないですかね。
ではそういう場合にはどうするか。もちろんカンパニーにもよるのですが、主催者側が臨時の神棚を作ったりする場合もあります。その臨時の神棚には近所の縁ある神社からお札を頂いて祀りまして御神酒をお供えしたりします。場合によっては神社から神職の方をお招きしてお祓いを行い、その時にお札を頂くこともあります。
このお祓いの式典を修祓式(しゅうばつしき・しゅばつしき)と呼びます。公演の無事を神に祈る儀式です。建築業界でも建て終わってから使用開始する前に修祓式を行ったりしますね。

劇団☆新感線では現在、全ての公演で修祓式を行っています。なにしろ多かれ少なかれ、というかほぼ毎回、血生臭い殺人のシーンがありますからね。それをまあ、何て言うか、あらかじめ神様にお詫びしてお許しを頂こうというワケです。
そういった一歩間違えれば事故に繋がる殺陣も多く、また大きな道具が複数同時に移動する舞台転換もあったりしますので注意は怠れません。危険が多くて事故の可能性もありますので、お祓いをして公演の無事を祈るというワケです。

修祓式をお願いするのは、その劇場のある場所の氏神さまや、ゆかりのある神社が多いようです。いや、その選択について詳しくはありませんけど、多分そうです。その神社から神職の方をお招きして、舞台上に祭壇を組んで式を執り行って頂きます。
式次第はそれぞれの神社によって多少の違いはありますが、概ね同じです。心身の罪穢れを祓う修祓(しゅばつ)に始まって、神様をお招きし、神饌を供え、祝詞(のりと)を奏上し、玉串を奉奠(ほうてん)するというような流れが多いですかね。
客席には全キャストスタッフが集まり、そればかりか主催関係者、劇場関係者までが居並び、厳粛に式に参加します。神職の方の指示に従って立ったり座ったり頭を垂れたりするのです。様々ではありますが、大抵は20分前後のお式でしょうか。

修祓式は神頼みという意味合いだけではありません。もちろん演劇の神様に公演の無事を祈っているのではありますが、この式を行うことで全ての関係者に危険を周知させ、緊張感を持って公演に当たるように促すためでもあるのです。
一瞬の気の緩みが大きな事故に繋がる可能性のある演劇という出し物を行うに当たって、気持ちを新たに真剣に取り組むことを再確認する式でもあるというワケです。

ただまあ、厳粛な空気の中、神職の方が唱えられる祝詞の中でお間抜けなタイトルが厳かに発声されたりすると、ちょっとまあ、笑いをこらえるような空気になったりする場合もあったりなかったりもするんですけどね。いや、修祓式には謹直な態度で臨まなければなりませんよそうですとも。

本文とは関係ありませんが、THEATER MILANO-Zaの楽屋から見た歌舞伎町ゴジラのうしろあたま。意外と可愛い。

プロフィール

粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み

【出演予定】
2023年劇団☆新感線43周年興行・秋公演
いのうえ歌舞伎『天號星』
11/1〜20◎COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール(大阪)

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