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情報☆キック
株式会社えんぶ が隔月で発行している演劇専門誌「えんぶ」から飛び出した新鮮な情報をお届け。
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(雑誌『演劇ぶっく』は2016年9月より改題し、『えんぶ』となりました。)
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【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第150回「電飾」

劇団☆新感線の「天號星」は東京公演中に一週間の休止期間を挟みながらも、なんとか千秋楽まで終えることができました。公演休止期間のチケットをお持ちだった皆様には大変なご迷惑をお掛けしてしまったことを改めてお詫びいたします。

その「天號星」ではタイトルの出るタイミングがいつもとは違いました。と言いますのは、劇団☆新感線の公演では毎回、公演タイトルが印象的に表示されるのです。タイミングとしましては始まってから10分くらい経ったあたりが多いでしょうか。
オープニングでなにやら事件が起こりまして、人々がなんやかんやしているところに主人公が現れ、もめ事を収めたりチンピラを叩き切ったりヒロインを助けたりするワケです。そこでドーンッと派手な音楽がかかって、そこでタイトルがバーンッと表示される、そんなパターンが多いように思います。そこからダンスが始まったり歌が始まったり大乱闘が始まったりする訳です。
タイトルが出る瞬間は舞台のオープニングを飾る大事なシーンです。勢いを付けるというかお客様を引き込むというか、とにかくこのタイトルのお芝居が今から始まるよというのを示すインパクトのある演出なのです。

タイトルの出し方には様々な方法があります。毎回できる限り新鮮な驚きを与えようと演出のいのうえひでのりさんが頭を捻っているのですが、まあどうしてもいくつかのパターンに決まってきてしまいます。照明を使ったり映像を使ったりドロップ(垂れ幕)を使ったりね。
照明を使う場合でも様々な方法があります。個人的に印象的だったのは「アテルイ」という作品のオープニングでして、タイトル文字を切りぬいた黒幕を垂らして、背後の様々な角度から照明で照らすことで、まるでタイトルが浮かび上がるように見えてとても印象的でした。
また、ドロップを使う場合にも様々な方法があります。舞台一面を覆うほど大きな幕に大きくタイトルを書いて、「振り落とし」と言う手法でストーンッと広げると一瞬で舞台一面にタイトルが広がります。それをまたストーンッと切り落として舞台が開けると次のシーンに移っていたりする訳です。
ことほど左様にタイトルにはその一瞬のために手間暇を掛けています。お客様の心を掴む瞬間ですから気合いが入っているのです。

「天號星」では電飾によってタイトルが出されました。電飾というのは多分「電気装飾」の略なんじゃないかと思われます。いわゆるイルミネーションですね。この年末の時期になると街中に溢れる、小さな電球を並べてキラキラさせるあの装飾です。ところでクリスマスシーズンの電飾ってなんだか浮かれていますよね。いや、それもまた良し。
今作では小さな電球をたくさん並べて大きなタイトル文字を作り、それを光らせることによってタイトルが表示されました。しかも今時の電飾はコンピュータ制御ですから様々な色やパターンで光らせることができるのです。
それに加えて一直線に並べた電飾を高速で順番に光らせることによって流れ星を表し、更に動きのある表現ができるようにもなっていました。
プロジェクターなどで映像を投影する場合にはやはり画面が少し暗くなりがちなのですが、電飾の場合は自らが光るのでクッキリとしたインパクトを与えることができるのです。

街灯や看板などの比較的簡単な電飾ならば照明さんが担当することもありますが、今作ほどの規模になりますとやはり電飾専門のスタッフさんが手掛けます。電飾の設計、製作、設置などは電飾専門のスタッフさんが行い、本番での運用は照明さんに引き渡される場合が多いですかね。
新感線の公演では毎公演のように何らかの形で電飾が使用されますので、毎回電飾スタッフさんにはお世話になっております。運用は照明さんが行いますので、電飾スタッフさんとは仕込みとバラシの時にしか会えないのですが、公演を支えて頂いている大事なスタッフです。

「天號星」でのタイトル表示は電飾で行われておりますという話と、演劇にも電飾は重要なんだよというお話でした。とはいえ、電飾でタイトルを出すという手法は今までにも何度もやっております。別に特別なことではありません。
ただね、今作はタイトルの出るタイミングが特別だったのですよ。特別だったのですが、「天號星」は来春にゲキ×シネ(映画館上映)が控えておりますし、今後はディスクが販売されるかもしれません。まだご覧になっていない方のために、その特別な瞬間についてはここには書かないでおきましょう。舞台をご覧になった方だけが「ああ、あの瞬間のことだな」とニヤリとして頂ければと思います。

本編とは関係ありませんが、先日の大阪公演で看取った大阪マルビルの解体現場。当然ですが足場もやっぱり円筒形なんだね。

プロフィール

粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み

【出演予定】
dopeⒶdope step.9「バンピーラダーズ」
2024年2月28(水)~3月3日(日)◎サンモールスタジオ

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