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情報☆キック
株式会社えんぶ が隔月で発行している演劇専門誌「えんぶ」から飛び出した新鮮な情報をお届け。
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(雑誌『演劇ぶっく』は2016年9月より改題し、『えんぶ』となりました。)
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【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第154回「稽古初日に台本が完成していない場合」

どうも! 現在ブシプロ「BURAI3」の稽古中の粟根です。桜が咲いたりいきなり暑くなったり急に寒くなったりする初春。季節の変わり目には様々な変化が多いので、どうぞお気を付けてお過ごし下さいませ。

さて、先日のdopeⒶdope「バンピーラダーズ」に続いて「BURAI3」で小劇場の舞台に立つ訳ですが、今日は小劇場にありがちな現象についてお話ししたいと思います。いや、小劇場ならば必ずという事ではありません。あくまでもありがち、という程度の話ですので話半分でお聞き下さい。でね、その現象というのは「稽古初日に台本が完成していない場合がある」って話なんですよ。
いやいやいや、小劇場はいつもそうだという話ではありませんし、当然ながら今稽古している作品や以前に上演した作品がそうだという話でもありません。あくまでも《ありがちな》一般論だと思って聞いて下さいな。

例えば劇団☆新感線の場合、劇場のキャパシティも多いしセットのサイズも大きいし登場人物も多いのです。まあとにかく全ての規模がデカいのです。鉄で作られた大きなセットが動いたりします。
となれば本番の何ヶ月も前には大まかな演出プランや美術プランを決めておく必要があります。盆を使うのか、迫りを使うのか、引き枠を使うのか、八百屋舞台を使うのか。これまでにこの連載でもご説明してきた演劇用語を連発しましたが、要するに稽古が始まるまでにはザックリとしたプランを決めておかなければならないのです。
そのためには台本がなくてはならず、必然的に稽古が始まる何ヶ月も前に台本が、少なくとも叩き台となる第一稿が完成していなくてはなりません。
新感線に限らず、大劇場で上演される演劇ならば概ねそのように展開しています。ええと、展開しているはずです。少なくとも美術や機構は決定していなければならないのです。

しかし、小劇場の場合は作・演出を同一人物が手掛けていることが多く、作家さんが演出プランを考えながら台本を書くこともしばしばです。つまり、作演出家の頭の中には粗筋とか美術プランとか演出とかについては出来上がっているのです。ただ、台本は完成していない。そんなケースがある場合もあるって話です。
稽古が始まる前には演出会議や美術会議が行われていて、各スタッフさんとの打ち合わせは終わっています。どういう舞台になるかは決まっています。ただ、台本は完成していない。そんなケースがある場合もあるんじゃないかなって話です。

その場合、出演俳優はどうすればいいのか。それはもう決まっています。今ある台本を読み込み、自分が演じる役について深く考え、キャラクタを造形し、今後の展開に準備をしていく、それが俳優の仕事です。
それが仕事ではあるのですが、台本が出来上がってくると意外な事実が明かされたりします。予想外の展開になったりもします。キャラクタの根幹が揺るがされる事態まで起こったりします。
その場合はどうすればいいのか。それももう決まっています。それまでに組み上げた人物像を一旦崩して新たなキャラクタを作り上げればいいのです。いや、崩す必要はありません。それまでの展開を足がかりとして更なる深みを目指せばいいのです。
人の心ってのは複雑なもんです。一見正反対な心情が同居したりするもんなんです。その葛藤がよりリアルでより人間的な人物像を構築していくもんなんです。

そういった状況で面白いのは、舞台をご覧頂くお客様と同じような心情の変化を稽古場で体験できることです。この人がこんな人だっただなんて! あの人はあんなことを考えていたのか! そういった驚きを稽古場で台本を貰った時に感じることができるのです。この感覚は貴重です。お客様に与えるべき新鮮な驚きを体感することができるのです。
この感覚を大切にしながら更に稽古を重ね、舞台に現出するドラマを自ら体験しながら新鮮に演じることが重要なのです。

カンパニーによっては台本が完成したのは稽古最終日だったとか、劇場に入ってからラストシーンが決まったとか、そういった貴重な体験をすることもあるそうです。いや、あるらしいという噂を聞いたことがあります。いや、あったような気がしないでもありません。
まあとにかく、演劇の現場というのはこのように刺激的な体験ができたりできなかったりあったりなかったりするらしかったりらしくなかったり。
私自身はそれほど過酷な現場に当たったことはありませんが、そういった刺激的な作品が文句なく面白かったりするのがまた不思議なモノですね。

ええと、改めて言いますけど「BURAI3」はそんな現場じゃないからね。ガンガンに稽古が進んでドンドンと面白くなっていますからね。アクション満載で笑いとヒューマンドラマが交錯していきます。どうぞ安心して劇場にお越し下さいませ。

本文とは関係ありませんが、市谷亀岡八幡宮の裏で見つけた「陸軍用地」と書かれた石碑。今は防衛省があります。

プロフィール

粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み

【出演予定】
ブシプロ「BRAI3 -最終章-」
2024年4月17〜22日◎あうるすぽっと(池袋)
https://burai3.bushi51.com/

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