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(雑誌『演劇ぶっく』は2016年9月より改題し、『えんぶ』となりました。)
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松岡充・藤岡正明 インタビュー

藤岡正明・松岡充

観劇後、
自分の人生を考えずにはいられなくなる

「自分が自分自身であるとは何か」という普遍的なテーマを問いかけ、観る者の心に深い余韻を残すミュージカル『SHOWMAN〜4番目の影武者〜』。第7回韓国ミュージカルアワーズにおいて大賞・脚本賞・主演男優賞の三冠を受賞し、音楽賞にもノミネートされた話題作が日本初上演される。主演を務める松岡充と共演の藤岡正明に、本作への思いを聞いた。

この台本は最初の段階で本物だと思えた

──本作のオファーを受けて、最初にどんなことを感じましたか?

松岡 本を読むまでは、自分のバンドのライブツアーと重なっているので、出演は難しいと思っていました。とはいえ、僕自身、韓国のエンタメや医学に興味を持っていたこともあり、すごく惹かれました。それで、翻訳されたばかりの脚本をいただいて読んだのですが、これはやる運命だと直感でわかりました。大きな困難を乗り越えてもやるべき作品で、プロデューサーが強く「松岡充に」と推してくださったことがすごく理解できた。これほどピタッとくる作品には簡単には出会えないし、出会うべくして出会った作品だと強く思いました。
藤岡 僕は、今回のプロデューサーとは4作目なんですが、大抵いつも〝何かがある〟んですよ。本当に毎回、一筋縄ではいかない。難しいテーマや社会的なメッセージ性が高いものを作っていらっしゃるので、今回も「またきたか」という感じです(笑)。僕が手放しでやりたいと思う作品は、何も考えなくてもできるような、バカげたストーリーのもので、重厚な作品はやっぱり疲れる(笑)。この作品もそういう作品になるだろうなと思っています。

――実際に台本を読まれて、その重厚さは感じていますか?

藤岡 実は、台本を読んだときは、逆に光が見えたように思いました。お客さまも心晴れやかに劇場を後にできるのではないかと思います。

――松岡さんは台本を読んでいかがでしたか?

松岡 簡単に聞こえてほしくないのですが、本物だと思いました。僕は日本の演劇を全て知っているわけではないですが、それでも20数年演劇をやってきて、ウエストエンドやブロードウェイ、韓国、そして日本の演劇との歴然とした差を感じてたんですよ。予算も上演期間もオリジナルも少ないので、それは仕方がないことなのですが、でも、そうした状況に飽き飽きしていたんです。さらに、世界レベルの作品が日本版になって、内容が少し薄まるというのも…しかも、そうした公演のチケットが1万円を軽く超えるような値段で。観客が一公演を観るために、チケット1枚を買うために、どれだけ頑張って働いてお金を稼がなくてはいけないのか。それを本当の意味で理解できない制作側もいて、そうしたことにもうんざりしてたんです。そんな中、今回の作品は一読して本物だと思えたんです。本気で演りたいと。

――出演が発表された際の松岡さんのコメントに「探し、紡ぎ、詩ってきた言葉達がこの脚本の中にあった」とありましたが、それは「本物」があったという意味ですか?

松岡 これまで300曲近くの歌詞を書き、社会的問題定義を歌ったり、自分自身やリスナーに問いかけたり。その中で、どうすればもっとリアリティを持って伝えられるか、いろいろな表現を30年以上試してきました。それがこの脚本にはたくさん出てきたので、脚本の中にセリフとして次々と出てきたので、あるはずないけど、僕のことを調べて書いたのではないか(笑)と思ったくらいです。きっと原作の脚本家さんとアンテナが近いんだと思います。
藤岡 そういう作品に出会えることって、ほとんどないですよね。僕はまだ、自分の価値観やメッセージ性、自分が作品に投影してきたものと深く強く結びつく作品と、運命のようにぶつかった経験がないです。それは本当に奇跡的なことだと思うので、松岡さんがこの作品とどんな化学反応を起こすのか楽しみです。

揺らぎがある作品だからこそシライさんで


松岡 この作品は、役者も観客も試す作品だとも思います。だから、答えはない。誰が正解で、誰が間違っているということではない。でも、自分の人生を考えずにはいられなくなる。少なくともこの作品を観た方は、これまでの人生について考えると思うし、これから先の不安や恐怖、死へ向かっていく自分を考えると思います。こういう話をしていると、すごく重い作品性ではと捉えられてしまうと思いますが、楽しんでいる役者を観て、観客の皆さんも楽しんでいただければいいですね。
藤岡 そうですね。それに、この作品をシライさんが演出されるというのも、すごくチャレンジングだと思います。シライさんは素晴らしい演出家ですが、ミュージカルは今回が初めてだそうです。正解がなく、揺らぎがある作品だからこそ、シライさんだったのかなとも思います。

――お二人は今回、初共演になりますね。

藤岡 そうなんです。僕たち世代からしたらスターなので、ご一緒させていただき、すごく光栄です。
松岡 僕はいろいろな方から藤岡くんのことを聞いています。クレバーで、すごく温厚な人。もちろん芝居も。音楽をやっていらっしゃるから、感覚が似ているところもあるのかな。

――お二人の共演も楽しみにしています。最後に、読者にメッセージをお願いします。

藤岡 この作品を観てくださったお客さまは、「自分はネブラ(主人公)だ」「私はスア(ヒロイン)だ」と思うところがあるかもしれません。そして、もしかしたら、それが自分の心の鏡を見るきっかけになるかもしれないと思います。そうした問いかけがあることで、生きている実感を感じてもらえる作品になるのではないかと僕自身も楽しみにしています。
松岡 保証書も何にもついてないチケットを買って、どんな内容かも分からないままに予定を組んで来てくださる方たちに対して、僕はいち表現者として誠意を持って、クオリティの高い作品を返さなくてはいけないと思っています。今回は、この共演者の顔ぶれだけ見ても「ご安心ください」と言える人たちです。脚本も素晴らしい。このインタビューが保証書になってくれれば嬉しいです。価値ある芸術作品だと思ってご来場いただければと思います。

プロフィール

まつおかみつる○大阪府出身。1995年、ロックバンド・SOPHIAのボーカルとしてメジャーデビュー、昨年30周年を迎えた。著名アーティストへの楽曲提供・プロデューサーとしても活動。俳優としてもドラマ・映画・ミュージカル・舞台の主演作を数多く務め、幅広く活躍。写真集出版・小説執筆・プロダクトデザイン・番組パーソナリティー、出身地「大阪府門真市」ふるさと大使など多彩な分野で活動するクリエーターアーティスト。主な最新作に、白井晃演出『LAZARUS』(25)、末満健一演出『キルバーン』(25)、秦建日子原作『Change the World』(24)など。

ふじおかまさあき○東京都出身。伝説の「ASAYAN」超ヴォーカリストオーデションを機に2001年にデビュー。05年『レ・ミゼラブル』のマリウス役でミュージカル界にも進出。08年『ミス・サイゴン』クリス役で脚光を浴び、以降数々のミュージカル作品に欠かせない存在となる。自らの演劇ユニット「青唐辛子」では脚本・演出・音楽・出演を手がけ、26年ミュージカル『シルヴィア、生きる』では初の外部作品演出を務めた。近年の主な舞台作品は『いつか~one fine day』、『HUNDRED DAYS』、『チェーザレ 破壊の創造者』、『ジャージー・ボーイズ』、『ピアフ』など。

(このインタビューは雑誌「えんぶ」2026年8月号より転載)
インタビュー◇嶋田真己 撮影◇松山仁 ヘアメイク◇田中エミ

公演情報

ミュージカル『SHOWMAN~4番目の影武者~』

脚本・作詞◇ハン・ジョンソク 作曲◇イ・ソニョン
翻訳◇宋元燮 上演台本・訳詞・演出◇シライケイタ 
音楽監督◇国広和毅
出演◇松岡充 潤花 藤岡正明 万里紗 福井晶一 福室莉音
演奏◇前田涼子(Pf) 国広和毅(Key) 熊谷太輔(Perc) 大野萌子(Trp) 磯部舞子(Vn) 島津由美/平井麻奈美(Vc)
9/1〜13◎新国立劇場 小劇場 
〈公式サイト〉https://consept-s.com/showman