
『星屑の町』シリーズ、ついにラストステージ!?
地方巡業を続ける売れないムード歌謡コーラスグループ、「山田修とハローナイツ」の悲哀を描く人気シリーズ『星屑の町』。その「完結篇」から10年、今度こそ本当のラストステージ? となる「忘却篇」が10月~11月に上演される。大平サブロー、小宮孝泰、渡辺哲、でんでん、有薗芳記、菅原大吉らハローナイツメンバーが、懐かしの歌謡曲とともに繰り広げる、笑って、笑って、そして切ない人生讃歌。劇中でリーダーの山田修を演じる小宮孝泰と、その弟・英二役の菅原大吉が、作・演出の水谷龍二とともに語り合う。
大阪のカラオケ居酒屋で古希祝い
──この作品は『星屑の町〜完結篇』で一度幕を下ろしましたが、そのときの約束「10年後にまた新作を!」がいよいよ果たされます。今回は大阪のミナミが舞台だそうですね。
水谷 大阪は98年の「ナニワ純情篇」以来で二度目になります。話の発端は山田修がロマンス詐欺に遭ってしまい、弟の英二が兄を気遣って古希祝いを企画する。実際に小宮くんと大平サブローくんが古希なので、じゃあ大阪でやろうと。大阪にはメンバーの市村が経営しているカラオケ居酒屋があって、市村役のラサール(石井)くんは議員活動があるので出られないのですが、その店にグループのみんなが集まって何曲か歌うという話になります。
──94年に始まったこのシリーズも8作目です。さまざまな思い出があると思いますが。
小宮 僕が演じる山田はリーダーなんですが、泣き虫で弱っちい(笑)。でも責任感はけっこうある頑張り屋という設定です。僕自身リーダー気質じゃなくて、でんでんさんとか(渡辺)哲さんなど年上の方たちもいる中で、舞台とか稽古場である程度仕切っていく役割になってしまった。そういう意味ではちょっと背伸びしないといけなかったので、最初はけっこう難しかったですね。
──そういう役を小宮さんに書いたのは?
水谷 みんなもそうですが、ほとんど当て書きなんです。山田修はレコード会社にいて、グループを作ろうと言いだす役で、でもリーダーになったもののあまり貫禄がない。そういうキャラだと、周りが「じゃあ助けなきゃ」みたいになるのがいいかなと思ったんです。
小宮 3作目ぐらいになったとき、水谷さんに「情けないやつがちょっと無理して頑張ってるというのが、うまく似合ってて良かった」と言ってもらって、そういう意味では自分でもかなり頑張ってやってよかったなと。
──役どころにうまく嵌まったわけですね。菅原さんは、修の弟で農業をやっていたのにグループ入りする英二役です。
菅原 1作目で、兄貴に手伝いを押し付けられた弟が文句を言いながら、でも結局農家をやりたくなくて付いていくことになるわけです。その話は舞台が僕の地元の宮城で、セリフが方言だったのでラクでしたが、芝居はまだ始めたばかりで必死でした。それから30年の間、このシリーズで役者としても育てられましたし、水谷さんや小宮さんはじめ先輩たちに本当にいろいろ教わってきました。
つかみで失敗しても、地雷はそこら中に埋まってる
──これだけ長く続いているのは、水谷さんの書かれる本の力もあるのでしょうね。
小宮 当て書きだから演じやすいのはもちろん、いい意味で余白のある本で、役者が遊べるんです。アドリブもラサールくんは入れるけど、有薗(芳記)くんは一切入れないとかそれぞれで。僕と菅原くんは、コンビみたいなシーンでちょっと入れたり。役者の自由度が高いんです。
菅原 それに僕が好きなのは、人と人との関係性に情があるところで、それが最後にワーッと物語から滲み出てくる。それも、稽古では気づかなかったのに本番になってお客さんにガーッと伝わったりする。なんかそういう不思議な本なんです。
──演じることで奥行きが出る本なのでしょうね。
菅原 そうなんです。だから稽古でも、いろんなことをやれるし、それを水谷さんがいい方向に引っ張ってくれるから安心なんです。
小宮 水谷さんがよくおっしゃるんですけど、「つかみで失敗しても、地雷はそこら中に埋まってるから」と。絶対どこかで笑いを取れるから外しても心配するなと。
──そこまで仕掛けてある! もちろんそれが出来る俳優さんが揃っているからだと思いますが。
水谷 そうです。このメンバーならいくらでも膨らませてくれるし、書きながらそれぞれの顔が浮かぶと話がどんどん転がっていったりしますから。
──ハローナイツのメンバーが30年以上変わらないこともすごいです。
小宮 あまり揉めないで、よくここまで来たなと(笑)。
菅原 『星屑の町』シリーズは仲間の話なんですよね。みんなで支え合ったり、時には喧嘩になったりもするけど、結局それは仲間がいるということなので。
──ちょっと殺伐とした今の時代には、それは夢でもありますね。そんな作品を観てくださる方にアピールをぜひ。
菅原 1回目から観てくださって、30年一緒に年を取ってきたお客さんもいます。とにかく元気で観に来てもらえれば嬉しいです。そして星屑のみんなが作り上げているこの温かい感じが、皆さんに届いて、心がほっとなるような時間を過ごしていただければ嬉しいです。
小宮 人と人との絆の話ですし、ちょっと忘れかけている日本人の情みたいなものを、肩肘張らずに、お風呂にでも入ってるような感じで楽に観てもらえれば。人情喜劇ですから泣かせるところもあるんですけど、いい感じでさらっと観てください。俺の役は絶対頭から泣いているような気がしますが(笑)。
水谷 ちょっと唐突ですが、今回ボクシングシーンがあるんです。サブローさんが大のボクシング好きで、出演者の新納多朗と江端英久もボクシングをやってて、女性の蔵下穂波もできるので、路上ボクシングのシーンを作ってあります。そこはちょっと見どころです。それと今回、出演してくれる春風亭昇太さんと皆のカラミも見どころです。
(このインタビューは雑誌「えんぶ」2026年10月号より転載)
インタビュー◇宮田華子 撮影◇松山仁
プロフィール
みずたにりゅうじ○北海道出身。1975年、放送作家として活動を始め、82年よりドラマの脚本、芝居の作・演出を手掛ける。94年、演劇ユニット星屑の会を結成。主な作品に『星屑の町』シリーズ、『風間杜夫ひとり芝居』シリーズ、明治座『居残り佐平次』、歌舞伎座『愚図六』、トム・プロジェクト『子供騙し』『南阿佐ヶ谷の母』など。
こみやたかやす○神奈川県出身。1980年、渡辺正行、ラサール石井と「コント赤信号」を結成、30代からは俳優業に専念。『星屑の町』全シリーズをはじめ、映画、ドラマで幅広い役柄を演じ分ける実力派として活躍中。役者の落語会「ごらく亭」を主催して高座にも上がる。近年の舞台出演作に、『セツアンの善人』、『令和版 線路は続くよどこまでも』、『11ぴきのネコ』など。
すがわらだいきち○宮城県出身。俳優として映像や舞台で幅広く活躍中。主な舞台は、『ある晴れた自衛隊』シリーズ、『星屑の町』シリーズ、明治座『居残り佐平次』、『火焔太鼓」、『うそつき弥次郎』の風間杜夫・平田満主演3部作にも出演。妻である竹内都子と二人芝居ユニット「夫婦印」を立ち上げ、『満月』、『月夜の告白』、『月とスッポン』を上演。
公演情報

星屑の会『星屑の町~忘却篇』
作・演出◇水谷龍二
出演◇大平サブロー 小宮孝泰 渡辺哲 でんでん 有薗芳記 菅原大吉/新納多朗 朝倉伸二 江端英久 星野園美 蔵下穂波/戸田恵子 竹内都子 春風亭昇太 ほか
10/3・4◎東京 シアター1010(プレビュー公演)
10月〜11月◎大阪、宮城、岩手、北海道を巡演
〈問い合わせ〉
石井光三オフィス
03-5797-5502 141stage@gmail.com





