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(雑誌『演劇ぶっく』は2016年9月より改題し、『えんぶ』となりました。)
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【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第百八十二回「階段のある楽屋」

  劇団☆新感線「アケチコ!」の福岡公演も終盤を迎え、なんとか無事に進行しております。その次は大阪公演です。無事に最後まで走り抜けられるよう、ますます気をつけていきたいと思います。

 前回は各劇場楽屋の鏡前に棚や引き出しがあれば便利だなあ、って話でした。まあ概ねそんな話でした。ちなみに、福岡公演でのキャナルシティ劇場では鏡前が一つずつ足にキャスターが付いていて移動できるユニット式になっているタイプでして、引き出しがあり、天板を棚のように使えるので実に便利です。ありがたい。ありがたいんだけど、結果的に机部分が高くなって若干使いにくいけどね。
 ただねえ、楽屋エリアが階層式なっていて、舞台面に行くためには階段かエレベーターを使わなければならないのが面倒なのです。まあね、しょうがないっちゃあしょうがないのですが、残念なところではあります。
 実を言いますと、多くの中〜大劇場では楽屋が階層式です。特に東京都心部や地方大都市中心部にある劇場ではほとんどがそうなのです。繁華街の限られた土地を有効に活用するためにはそうせざるを得ないんですね。階層が分けられているから、違う階層のキャストとは舞台上でしか顔を合わせないなんてコトもあるのです。
 もしくは全ての楽屋がワンフロアに納まっているけれども、舞台面とは階層が違うから結局階段を使わなくてはいけないとか。出番が終わってハアハア言いながら階段を上ったり下りたりするのは大変です。いや、いいんですけど、1ステージ中に何度も上り下りすると、やはり太股に疲労が溜まっていくような気もします。

 もちろん、舞台面と同じ階層にも楽屋はあります。ですが、舞台面の楽屋はゲストや大看板が使うのが常です。もしくは早替えなどの関係で衣裳さんや床山・ヘアメイクさんの楽屋となるコトが多いのです。私のような中堅以降の俳優部はワンフロア上か下になりますね。本番が始まるとほとんど楽屋に帰ることのないスタッフさんの楽屋は更に上か下になります。
 エレベーターがあれば多少なりとも楽なのですが、一台しかないから使いたい時に使えないとか、設備が古すぎて動作がノロいとか、それはそれで問題点もあるのです。エレベーターがなかなか来なくて結局階段を走っちゃったりね。来たと思ったら更に下りていっちゃったりね。だったら常に階段を使う方が精神的にも楽だったりします。
 しかも劇場には相当な高さがありますので各フロアの天井も高くなりまして、各フロアの間が遠いのです。つまり階段も長くなるわけで、普通のオフィスの2倍近くは長くなっていると思います。そんな長い階段を何度も上り下りすると考えてご覧なさい。そりゃ大変でしょうよ。

 舞台ソデから楽屋エリアに出てスグの場所には大抵ちょっとだけ広いスペースがあり、そこでは早替えが行われたりするのですが、出番の合間がそれほど長くない場合にはそこで休憩する場合も多いのです。だって階段を上り下りするのが面倒くさいから。結果としてそこでは常時誰かが休憩しているというコトになるのです。
 本番中では毎回同じタイミングで待機するコトになりますから、同じメンツが揃うことになります。楽屋が違えばお互いに話す機会も限られますから、そこでしかノンビリ話し合えるタイミングがなかったりもします。ですからそこでは昨日の話の続きとかが繰り広げられたりね。一日おいて話の続き。不思議なものです。

 出番へのスタンバイというのは、モニターを聞きながらこのシーンになったら楽屋を出ようというタイミングがおのおの決まってきます。ですから、エレベーターがある場合にはエレベーター前で毎日同じタイミングで同じ人と会うことになります。ここでも普段余り会話をしない人との会話できたりするのも楽しいものです。ただまあ、毎日のことですからその内に話す内容がなくなってきたりしちゃうのは困りものですが。
 同様に、階段でも同じタイミングで同じ人とすれ違うのです。自分がスタンバイに向かう時に、出番を終えたばかりの共演者が楽屋へと帰っていくタイミングです。いつもはハアハア言いながら上がってくる人が今日に限って妙に笑顔だったりすると、お、今日は調子よかったのかななんて感じたりするのも楽しいモノです。

 階段のある楽屋は上がったり下がったりと大変ではあるのですが、もうそれはそれは大変ではあるのですが、それなりに楽しかったりもするのです。終演後に衣裳を脱いだりマイクを外したりしながら階段ですれ違った時に、お互いに晴れやかな顔で「お疲れ様でした!」と言い合ったりね。ねぎらい合ったりね。ちょっとしたミスを笑い合ったりね。
 まあ、もちろん階段はない方が良いのは本当なのですけどもさ。

本文とは関係ありませんが、南側から見たキャナルシティ博多と中洲。眠らない街、中洲。

PROFILE

粟根まこと
あわねまこと│64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。

【出演予定】
劇団☆新感線「アケチコ!」
【福岡公演】
7/24〜8/8◎キャナルシティ劇場
【大阪公演】
8/20〜30◎フェスティバルホール