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(雑誌『演劇ぶっく』は2016年9月より改題し、『えんぶ』となりました。)
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【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第百八十三回「影コーラス」

 劇団☆新感線「アケチコ!」は6月の東京公演、7月の福岡公演から8月の大阪公演までを無事に終えることができました。ご来場頂きました皆様、ありがとうございました。いつもとはちょっと違う新感線をお楽しみ頂けましたでしょうか。

 その「アケチコ!」は副題に「怪奇骨董音楽劇」と付いている通りに音楽劇です。久しぶりに生バンドにも入って頂いて、ガンガンに歌って踊りました。いや、私じゃないですよ。歌と踊りの巧い人々に歌い踊って頂いたんですよ。
 しかも、いつもの新感線のようなロック一辺倒ではなく、歌謡曲風やら演歌風やらモータウン風やら、色々とバラエティに富んだ楽曲が多かったのも特徴です。色味を付けるために新感線としては初めてパーカッション奏者に入って頂いたのも印象的ですね。
 だもんですから、いつもよりもハーモニーが重要ですので、多くの曲でコーラスが取り入れられました。そして、この流れで今回ご紹介したい業界用語であります「影コーラス」略して「カゲコ」が出てくるのです。

 通常のミュージカルの場合、歌のシーンには大量のアンサンブルさんが出てきて歌い踊ります。歌の巧い方々がバシバシに歌うわけですから分厚いハーモニーでお届けできます。しかし、新感線の場合は比較的少なめの登場人物での歌唱シーンが多いので、舞台上にいる人たちだけではハーモニーが足りない場合もあります。
 そんな時によく使われるのが「影コーラス」という手法です。要するに、舞台上ではなく、舞台ソデ(もしくは専用のコーラスボックス)に置いてあるマイクに向かって、そのシーンに出演していない俳優がコーラスを担当するのです。舞台の影でコーラスをするので影コーラス。判りやすい名前です。
 もちろん、生バンドではなく録音された伴奏(いわゆるカラオケ状態の音源)での歌モノの場合ならば簡単です。伴奏音源に予めコーラスを入れておけば良いのです。そうすればどんなに分厚いコーラスでも実現できますからね。しかし、生バンドのミュージカルの場合はそうはいきません。生だから。ですので影コーラスが必要なのです。

 影コーラス用のマイクは通常、上手と下手(かみてとしもて)、つまり両方の舞台ソデに設置されます。しかも、大きな舞台装置やキャスト・スタッフの移動導線に影響の少ない場所が選ばれます。「アケチコ!」では二階舞台(階段で上がれる奥の部分ね)の下に設置されていました。影コーラスを担当する人はそのマイクに向かって歌うわけです。当然ながら影コーラス用のモニタースピーカーも付いていますよ。
 影コーラスですから、そのシーンに出番のない人が担当します。楽屋着に着替えている場合もありますが、出番の関係で衣裳のまま歌うこともあります。つまり、出番でもないのに舞台ソデに行く必要があるのですね。忘れがちではありますが、まあ曲が鳴り始めてから向かっても大体間に合います。もちろん影コーラスだって本番楽曲の一部ですから歌稽古にも参加しますよ。

 「アケチコ!」ではラストシーンでほとんどの出演者が舞台上におり、全員で何やら壮大な歌を歌っていました。ラストシーンに出演していないキャストはほんの数人だけです。でも、そのすぐ後にはカーテンコールがありますから、出ていないキャストもソデにいるわけです。だからというわけではありませんが、その数人のキャスト(私も含めて)も影コーラスに参加しておりました。ですので、あの曲は全出演者による壮大なコーラスなのです。まあ、私は影コーラスの合間を見計らって着替えていましたけどね。

 そんなこんなの影コーラス事情。でも、今回調べてみたら「影コーラス」という用語はミュージカル全般ではなくて、どちらかといえば宝塚歌劇団用語のようです。しかも宝塚では舞台ソデ(コーラスボックス)で主メロディーを歌う「影ソロ」というのもあるそうです。それは知らなかったな。色々あるなあ。

こちらが影コーラス用のマイク。本体に小さく「影cho」と書いてあります。でも逆さまだけどね。

PROFILE

粟根まこと
あわねまこと│64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。

【出演予定】
劇団☆新感線「髑髏城の七人 LAST STAND」
【東京公演】
11/14〜12/25◎新橋演舞場
【長野公演】
2027/1/21〜24◎ホクト文化ホール
【金沢公演】
2/8〜14◎金沢歌劇座
【大阪公演】
2/25〜3/11◎フェスティバルホール