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(雑誌『演劇ぶっく』は2016年9月より改題し、『えんぶ』となりました。)
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大和悠河のパリから贈るエトワール紀行 ~ロマンチックに紡ぐ魔法~⑰

Parisにもどりました。

この赤い壁には、改修中のサル・リシュリューを離れ、パリの11劇場へ上演の場を広げる〈HORS LES MURS――壁の外のシーズン〉と記されています。今、コメディ・フランセーズは、2026年10月15日の帰還を目前にしながら、まだこの“壁の外”にいます。
そう、今はまだ《赤い壁の外》です。

赤い壁に掲げられた〈HORS LES MURS――壁の外のシーズン〉の公演案内。
サル・リシュリューを離れて上演する作品と、舞台となるパリの11劇場が記されていました。

【編注1】11劇場の公演案内の内容訳は最下段にあります。

Comédie-Française(コメディ・フランセーズ)の前のカフェで、バゲットをかじっています。

美味しい!
ここのジャンボンとフロマージュのバゲット!最高です!

Très bien(トレ・ビアン)(笑)

今回の日本帰国も、そして出国も、玄関口は東京宝塚劇場。
上演中の『ポーの一族』を観劇したら、Parisに帰る前にFrankfurt(フランクフルト)に寄りたくなって(笑)、フランクフルトに寄り道して、Parisに帰ってきました。
エドガーを演じる雪組トップスターの朝美絢さんは、私のさよなら公演で初舞台を踏んだ95期。
メリーベルを演じるトップ娘役の音彩唯さんは105期。

トップコンビは、ちょうど10期違い。
朝美絢さんと同じ95期の瀬央ゆりあさんは、フランク・ポーツネル男爵。
アラン・トワイライトを演じる縣千さんは101期。

そして、10月1日。
東京宝塚劇場では、『ポーの一族』の新人公演が開演しました。
新人公演でエドガーを演じたのは、本公演ではジャン・クリフォードを演じる106期の華世京さん。
メリーベルを演じたのは、111期の澄花まいさん。
私も、新人公演ではたびたび主演をさせていただきました。
何回主演したのか?
…………ひとつひとつしっかり思い浮かべないと、思い出せない(笑)。
Parisに戻ったばかりで、まだ慌ただしいので、またいつか、ゆっくり思い出すことにします(笑)。

『ポーの一族』は、雪組。
宝塚歌劇団の公式英語表記では、雪組はSnow Troupe(スノー・トゥループ)。
「組」は、Troupe(トゥループ)。
私がいた宙組は、Cosmos Troupe(コスモス・トゥループ)。

…………Troupe。

Parisにも、この言葉があります。
Parisには、Comédie-Française(コメディ・フランセーズ)という国立劇団があります。
その歴史的な本拠地、Salle Richelieu(サル・リシュリュー/リシュリュー劇場)。
この場所も、私が毎日のように通る場所です。
ルーブルの友の会の年間パスポートを持っているので、ルーブル美術館を出たらすぐの場所にあって、すごく通りやすいのです。
昨年からは、ここを通るたびに赤い工事壁の景色を見ています。

2026年6月。
Salle Richelieuの前には、こんなに長い赤い壁がありました。

2026年6月。サル・リシュリューの前に続く、こんなに長い赤い壁。11か所へ、『演劇』が飛び出しています。

コメディ・フランセーズのすぐそばにあるCAFÉ BAR LE NEMOURS(カフェ・バー・ル・ヌムール)の前で。この写真の左側にはパレ・ロワイヤル、右側にはルーヴル美術館があります。

コメディ・フランセーズのすぐそば、ここはいつものお気に入りの席です。CAFÉ BAR LE NEMOURS(カフェ・バー・ル・ヌムール)の中で、バゲットをひと口。窓の向こうには、まだ〈HORS LES MURS〉を告げる赤い壁。
暑くても寒くなっても、テラス席は賑わっています。

2026年10月1日。赤い壁が短くなりました。コメディ・フランセーズの本拠地、サル・リシュリュー!再開間近!

2026年6月

そして、10月1日。

…………あ!
日本から帰ったら、赤い壁の向こうから劇場がずいぶん見えるようになってる!

コメディ・フランセーズの本拠地、サル・リシュリューの前で。金色の劇場名の下、太陽の強い光を浴びています。列柱の赤い案内板のBILLETTERIE(ビユトリ)は、チケット売り場のこと。壁の外で公演を続けた一座が、もうすぐここへ帰ってきます。もうすぐ、ここでまた観劇できる。

La Maison de Molière――「モリエールの家」と呼ばれるコメディ・フランセーズ。金色の劇団名の下で、《Cosmos Troupe宙組》にいた私もにっこり(笑)

サル・リシュリューのガラスの向こうを、ちょっとのぞいて。「COMÉDIE-FRANÇAISE RICHELIEU」。その下には、Entrée Place Colette――コレット広場側の入口。モリエールが生きたパリと、今、私がいるパリが重なります。…………私の気持ちはもぉ劇場の中。

2026年10月1日
Salle Richelieuが再び開くのは、10月15日。
もうすぐ!!
嬉しい!!
Salle Richelieuが工事中も、Comédie-Françaiseは公演を続けました。
壁の外で。
Comédie-Françaiseには、俳優たちの集団、劇団=「一座」、Troupe(トゥループ)があります。
ほんと、宝塚みたい(笑)って思っています。
…………ここもTroupe(笑)。

17世紀のParisには、
la troupe de Molière(ラ・トゥループ・ドゥ・モリエール)
モリエール一座がありました。

1643年。21歳のモリエールは、仲間たちとL’Illustre-Théâtre(リリュストル・テアトル)を結成しました。
1999年。21歳の私は、シェークスピアの『十二夜』に主演しました。
…………21歳。

モリエールは、俳優として舞台に立ち、作品を書き、一座を率いました。
モリエールも、Troupeの人です。
私も、Cosmos Troupeの人だった(笑)。
17世紀のParisと宝塚宙組が、「Troupe」という一語でつながった気がして、たまらなく嬉しい(笑)。

Comédie-Françaiseは、
La Maison de Molière(ラ・メゾン・ドゥ・モリエール/モリエールの家)と呼ばれています。

Molière(モリエール)が亡くなったのは、1673年。
Comédie-Françaiseが誕生したのは1680年。
Louis XIV(ルイ14世)の命令で、Parisに残っていた二つの劇団=Troupe(トゥループ)がひとつになりました。
モリエールが亡くなった7年後です。
(1680年 − 1673年=7年)

Comédie-Françaiseができたとき、モリエールはもういません。
モリエールは「モリエールの家」に住んでいないのに、Comédie-FrançaiseはLa Maison de Molière(ラ・メゾン・ドゥ・モリエール/モリエールの家)と呼ばれています。
Comédie-Française誕生、1680年からちょうど200年。
1880年。
Comédie-Française創設200周年の舞台で、《La Maison de Molière》「モリエールの家」という題名の詩が朗読されました。
このとき、モリエールが亡くなってから207年。
(1880年 − 1673年=207年)
なんて、家ができるのって大変なんだろう。
「モリエールの家」と呼ばれるComédie-Françaiseの歴史的な本拠地となる劇場が、Salle Richelieu(サル・リシュリュー/リシュリュー劇場)です。
宝塚歌劇団で言えば、宝塚大劇場のような、本拠地となる劇場です。
ルーブル美術館のすぐそば、Palais-Royal(パレ・ロワイヤル)にあります。
モリエールが亡くなった126年後、1799年にComédie-FrançaiseがSalle Richelieuを本拠地としました。
(1799年 − 1673年=126年)
もちろん、モリエールはこの舞台に立っていません。

そして、2026年。
Salle Richelieuは改修工事に入りました。
その間も、Comédie-FrançaiseのTroupeは公演を続けました。
HORS LES MURS(オール・レ・ミュール)。
フランス語で、「壁の外」。
今回の工事中も壁を出て、ParisとNanterre(ナンテール)の11の劇場で公演を続けたのです。
劇場が変わるたびに、そこで舞台をつくる人たちの仕事も続いていました。

赤い壁にずらりと並ぶ、〈HORS LES MURS――壁の外のシーズン〉の11の劇場の公演案内と劇場地図。どの劇場で、どの作品を上演するのかが記されていました。

工事壁の表示
Chantier interdit au public
(シャンティエ・アンテルディ・オ・ピュブリック)

工事現場につき、一般の方は立入禁止

※ 「Chantier」は工事現場、「interdit au public」は一般立入禁止
Sortie de camions
(ソルティ・ドゥ・カミオン)

「工事現場につき一般立入禁止。工事車両出口」

という赤い壁の表示です。

SAISON HORS LES MURS janvier-juillet 2026

赤い壁には、どの劇場で、どの作品を上演するのかも、ずらりと貼られていました。
…………あ、これって、、、。

東京宝塚劇場が建て替えられたとき、宝塚歌劇団は有楽町駅近くに建てられた仮設のTAKARAZUKA1000days劇場で公演を続けました。

思い出しました。

旧・東京宝塚劇場。
TAKARAZUKA1000days劇場。
そして、新しい東京宝塚劇場。
劇場が変わる、その変わり目、変わり目で、私は新人公演の主演をさせていただいていました。

…………あ。
何回主演したのか。
今、Parisでこの劇場の改修工事を見ていると、宝塚の劇場が建て替わっていった時間と一緒に、ひとつひとつ、しっかり思い起こしたくなるのです。
ParisのComédie-Françaiseに懐かしさをおぼえるのは、私の青春を思い起こすゆとりを与えてくれるからなのかもしれません。

そのときは、そんなことを考えるゆとりもなかったけれど、
…………幸せなことだったな。

私は、Troupeにいました。
1673、1680、1799、1880、2026。

…………ずいぶん永い時をめぐっています(笑)。
Comédie-Françaiseには、3つの劇場があります。
公式には、こんな言葉があります。

UNE TROUPE, UNE MAISON, TROIS THÉÂTRES À PARIS

ひとつのTroupe。

ひとつのMaison。

Parisに3つの劇場。

そして今回の東京で、もうひとつのTroupeを観ました。

シアターオーブロビーから渋谷を見渡すと…………これまで宝塚で観たことのない景色を見せてくれた『NINE』に、モリエールの『壁の外』が重なります。

月組『NINE』。
9月27日に千秋楽を迎えた公演です。
東急シアターオーブのロビーから渋谷を見下ろしながら、
…………私の知っている渋谷と、なんて違うんだろう。
そう思っていました。
そして、鳳月杏ちゃん。
2006年。私が宙組トップスターになる、その前の年。『NEVER SAY GOODBYE』の宙組公演で初舞台を踏んだ、ちなつちゃん。

2026年。
20年が経ちました。
『NINE』は、ちなつちゃんの20年間の宝塚生活、その最後の宝塚大劇場・東京宝塚劇場公演を前にして、宝塚を飛び出した舞台でした。

宝塚大劇場でも、東京宝塚劇場でもない。
西武渋谷店も、9月30日に58年の営業を終えたばかり。
目まぐるしく変わる渋谷の街を見渡す、東急シアターオーブ。

そこで私が観た『NINE』は、
…………私の記憶にあるかぎり、宝塚では観たことのない景色でした(笑)。

つづく。

大和悠河
YUGA YAMATO

* * *

【編注1】
〈HORS LES MURS――壁の外のシーズン〉パリの11劇場で上演される作品(内容訳)

COMÉDIE-FRANÇAISE HORS LES MURS
(コメディ・フランセーズ・オール・レ・ミュール)

⭐︎壁の外のコメディ・フランセーズ
(本拠地サル・リシュリューの外で行う公演)

⭐︎LES FEMMES SAVANTES
(レ・ファム・サヴァント)
『女学者たち』
作者:Molière(モリエール)
演出:Emma Dante(エンマ・ダンテ)
会場:Théâtre du Rond-Point(テアトル・デュ・ロン=ポワン/ロン=ポワン劇場)

⭐︎HAMLET
(ハムレット)
『ハムレット』
原作:William Shakespeare(ウィリアム・シェークスピア)
演出:Ivo Van Hove(イヴォ・ヴァン・ホーヴェ)
会場:Odéon–Théâtre de l’Europe(オデオン=テアトル・ド・ルーロップ/オデオン=ヨーロッパ劇場)

⭐︎LA PUCE À L’OREILLE
(ラ・ピュス・ア・ロレイユ)
耳の中の蚤(疑いが心に芽生えること)
作者:Georges Feydeau(ジョルジュ・フェドー)
演出:Lilo Baur(リロ・バウアー)
会場:Nanterre-Amandiers(ナンテール=アマンディエ)

⭐︎HÉCUBE, PAS HÉCUBE
(エキュブ、パ・ゼキュブ)
『ヘカベ、ヘカベではない』
テキスト・演出:Tiago Rodrigues(ティアゴ・ロドリゲス)
会場:13e Art(トレジエム・アール)

⭐︎LE TARTUFFE OU L’HYPOCRITE
(ル・タルチュフ・ウ・リポクリット)
『タルチュフ、または偽善者』
作者:モリエール
演出:イヴォ・ヴァン・ホーヴェ
会場:La Villette–Grande Halle(ラ・ヴィレット―グランド・アル)

✳︎コメディ・フランセーズの公式公演     ⸻2つの劇場での6作品  ⸻

会場:THÉÂTRE DE LA PORTE SAINT-MARTIN
(テアトル・ド・ラ・ポルト・サン=マルタン/ポルト・サン=マルタン劇場)

⭐︎LE BOURGEOIS GENTILHOMME
(ル・ブルジョワ・ジャンティヨム)
『町人貴族』
作者:モリエール
演出:Valérie Lesort(ヴァレリー・ルソール)/Christian Hecq(クリスチャン・エック)

⭐︎LE CID
(ル・シッド)
『ル・シッド』
作者:Pierre Corneille(ピエール・コルネイユ)
演出:Denis Podalydès(ドゥニ・ポダリデス)

⭐︎LE MALADE IMAGINAIRE
(ル・マラッド・イマジネール)
『病は気から』
作者:モリエール
演出:Claude Stratz(クロード・ストラッツ)
会場:THÉÂTRE DU PETIT SAINT-MARTIN
(テアトル・デュ・プティ・サン=マルタン/プティ・サン=マルタン劇場)

⭐︎CONTRE
(コントル)
『反対に』『抗して』
John Cassavetes(ジョン・カサヴェテス)とGena Rowlands(ジーナ・ローランズ)の人生と作品に基づく
演出:Constance Meyer(コンスタンス・メイエ)/Sébastien Pouderoux(セバスティアン・プードルー)

⭐︎LES HÉROS NE DORMENT JAMAIS
(レ・エロ・ヌ・ドルム・ジャメ)
『英雄たちは決して眠らない』
(円卓の騎士たちをもとにした作品)
演出:Edith Proust(エディット・プルースト)

⭐︎SÉISME
(セイスム)
『地震』
作者:Duncan Macmillan(ダンカン・マクミラン)
演出:Robin Ormond(ロビン・オーモンド)

この6作品の会場は、上記の2劇場です。

SAISON HORS LES MURS
(セゾン・オール・レ・ミュール)

《壁の外のシーズン》
本拠地外公演シーズン

Janvier–Juillet 2026
(ジャンヴィエ―ジュイエ・ドゥー・ミル・ヴァン=シス)

地図に記されている11劇場は、
※ Théâtre Nanterre-Amandiers(テアトル・ナンテール=アマンディエ)
※ La Villette–Grande Halle(ラ・ヴィレット―グランド・アル)
※ Théâtre de la Porte Saint-Martin(ポルト・サン=マルタン劇場)
※ Théâtre du Petit Saint-Martin(プティ・サン=マルタン劇場)
※ Théâtre du Rond-Point(ロン=ポワン劇場)
※ Studio-Théâtre(ステュディオ=テアトル)
※ Théâtre du Châtelet(シャトレ劇場)
※ Théâtre du Vieux-Colombier(ヴュー=コロンビエ劇場)
※ Odéon–Théâtre de l’Europe(オデオン=ヨーロッパ劇場)
※ Théâtre Montparnasse(モンパルナス劇場)
※ 13e Art(トレジエム・アール)
です。

ポルト・サン=マルタン劇場とプティ・サン=マルタン劇場が地図上では一つの位置にまとめて記されていますが、数えると別々の劇場なので、合計11劇場(※日本語の作品名は、定着した邦題のほか、原題の意味を伝えるための意味訳・直訳です)。

文◇大和悠河 写真提供:(株)GOOGA

大和悠河のパリから贈るエトワール紀行 ~ロマンチックに紡ぐ魔法~

宝塚トップスター・女優・大和悠河 が紡ぐ、伝説の都からの最新アートのトキメキとカンゲキのクロニクル。
『えんぶ☆TOWN』連載では、大和悠河が石畳のパリで感じた街の鼓動や、心温まる出会いから得た感動、その感動から生まれるインスピレーションで、あなたの日常に新たな光を注ぐことでしょう。
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