風間杜夫ひとり芝居『カラオケマン ミッション・インポッシブル ~牛山明、バンコクに死す~』間もなく開幕!風間杜夫 インタビュー 

 
トム・プロジェクト30周年記念公演 第二弾として、風間杜夫ひとり芝居『カラオケマン ミッション・インポッシブル ~牛山明、バンコクに死す~』が10月11日から本多劇場で上演される。(9月末より北海道ほかでも公演あり)

作・演出を務めるのは、風間とタッグを組んで長年にわたってひとり芝居を共に作り上げてきた水谷龍二。「牛山明シリーズ」の最新作となる本作では、シリーズ初の海外編として牛山明がタイのバンコクでミッションに挑む。ライフワークともいえるひとり芝居の本番に向けて稽古に励む風間に話を聞いた。

実年齢で牛山明を演じてきた理由とは?

──今回は牛山明が初めて海外に飛び出しますが、その発案は水谷さんの方から出たのでしょうか。

そうです。これまでいろんな土地を放浪して、いろんなことに出くわしてきた牛山明が「ミッション・インポッシブル」というのは面白いんじゃないか、ということで最初の構想があがってきました。

──アクション映画的な雰囲気で作ろう、という構想でスタートしたのですね。

そのつもりなんですけどね、体が動かないんです(笑)。だから映像と音と照明でごまかそうと思ってます(笑)。

━━牛山明はこれまでも風間さんの実年齢と同じ設定で演じて来られましたが、そこへの思いを教えてください。

第一作目が48歳のときでしたかね、僕ら団塊の世代がこれから50代を迎えるにあたって、同世代に対するエールという気持ちがあったので、等身大でいこうと思いました。それでシリーズをやり続けていくうちに気がついたらもう60歳を過ぎていて、一度牛山明シリーズは閉じたんです。それで他のひとり芝居をやってきたのですが、3年前に『帰ってきたカラオケマン』で牛山明が復活しました。昨年の公演は74歳になった爺さんがちょっと恋心を抱くという作品で、そして今回は、75にして危険を顧みずミッションをやり遂げるという作品で、やはり実年齢だからこそ面白い、というところはあると思っています。

──11年間ブランクがあって、また牛山明シリーズをやろうと思った理由は何だったのでしょうか。

もう単純に、飲んでいる席で「あの牛山明は今どうしてるかな」と話題になりまして、「じゃあ、あいつにもう一度帰ってきてもらおう」という発想でまた始めることになったんです。

──風間さんにとって、牛山明とはどんな存在なのでしょうか。

第一作目を作ったときに、牛山明というのは「風間杜夫という役者にならなかった僕」というような、僕の分身みたいなつもりがちょっとあったんです。やっていくうちに、だいぶ僕から離れていろんなことをやりだしちゃったので、もう僕の分身とは言えないんですけどね(笑)。芝居っ気があって、前作では福岡の歌う観光ガイドをやっていて、今回は結婚式場の歌う司会者なんですけど、歌好きの男が歌を武器にして七転八倒するという、それをこれから先も、80過ぎても体が動く限り、やり続けていくつもりでいますけどね。

━━劇中で歌う曲はどのように決めているのでしょうか。

今回歌う曲のうち、1曲は水谷さんが一作目のときに「ぜひこれでやりたい」と出してきた曲です。あとは僕がカラオケで歌っているレパートリーがほとんどで、最後の曲は毎回プロデューサーが持ってくるんですが、難しい歌が多いんですよね。でも芝居にピタッとはまる曲を持ってくるので、そこはプロデューサーを信頼しています。

「風間、元気だよあいつ」と思わせたい

──作・演出の水谷さんとは長年タッグを組んできました。

水谷さんは、本当に温かみがあって優しさに満ちている本を書く人なんです。キャラクターは僕に当て書きしてくれているところが結構あって、どこかお調子者なんですけど、何があってもめげずに前を向いて生きていこう、という人間で、見に来てくださるお客様にもエールを届けてくれるような、そういう作家だと思っています。でも、こんなに長く続くとは僕らも思ってなかったんですよ。ひとり芝居を始めてみたらすごく難しいジャンルだとわかって、一作目のときにはちょっと悔しい思いもしたんです。それで「もう1回やろう」という気持ちが芽生えて、でもそこからシリーズになるとは思わなかったですよ(笑)。

──風間さんはこれまで様々なジャンルの作品にご出演されてきました。その中でひとり芝居をコンスタントにやってこられた理由はなんでしょうか。

僕のひとり芝居は、かなり独特で他に類がないんじゃないかと思っています。それをここまでやり続けたんだから“風間杜夫のひとり芝居”というものを確立、と言ったら大げさだけど、とにかく「ちょっと他にはないよ」というところを胸張ってやっていきたいなとは思っています。五部作を一挙上演したときは5時間近く喋りっぱなしで舞台に立っていたわけで、こんなことをやる奇特な奴いませんよ、僕しか(笑)。これは演劇史に残ると思っています。

──ひとり芝居というと、俳優ひとりだけの「孤独な闘い」というイメージもありますが、そのあたりはどのような感覚なのでしょうか。

最初はすごくお客様が怖かったんですが、最近はどこか捨て鉢になっているというか(笑)、「もうどうでもいいや」というか。昔は「風間さんすごいですね」と褒められたい気持ちが強かったんですけど、今は褒められたいとか、好かれたいとか、そういうのはないんですよ。もちろん、お客様に喜んでもらいたい、という気持ちはあります。だから、もちろん緊張はしますけど、あまり孤独とか怖いとかはないです。

──本日の稽古を拝見しましたが、稽古場にいらっしゃる皆さんがよく笑っていたのが印象的でした。

稽古場ではちょっとふざけが過ぎるときもありますね(笑)。ただ、今回の牛山明は大変なミッションに直面して危険な目にもあったりするので、動いて叫んで120%ぐらいのエネルギーを出さないと駄目なんですよ。そうじゃないと喜劇にならない。だから、今回は毎ステージくたびれると思いますよ。今まで以上にテンションを上げてやらないと、このおかしみは伝わらないと思うので。75歳の後期高齢者なんですけど(笑)、「風間、元気だよあいつ」と思わせないと。まあ、実際のところ元気なので、元気印で今回やっていこうと思っています。

──本作を楽しみにされている方へのメッセージをお願いします。

これまで以上に牛山明がはつらつとエネルギッシュに動き回りますので、老いも若きもみんなで見届けてください! 


■PROFILE■
かざまもりお◎1949年東京生まれ。59年~66年子役として活躍。早稲田大学演劇科、俳小附属養成所を経て、71年表現劇場を結成。77年以降、つかこうへい事務所『熱海殺人事件』『蒲田行進曲』などに出演。とくに『蒲田行進曲』は映画化され、日本アカデミー賞最優秀助演男優賞など多数受賞。舞台、映画、TVドラマ、ナレーションなどマルチに活躍するだけでなく、落語にも取り組み独演会を開くなど、実力派俳優として常に第一線を走り続けている。近年の主な舞台作品に、『おちょこの傘もつメリーポピンズ』(金守珍演出)『ハザカイキ』(三浦大輔演出)『大誘拐』(笹部博司演出)『少女都市からの呼び声』(金守珍演出)『ふるあめりかに袖はぬらさじ』(齋藤雅文演出)『バンズ・ヴィジット』(森新太郎演出)『青空は後悔の証し』(岩松了演出)『泥人魚』(金守珍演出)『白昼夢』(赤堀雅秋演出)『セールスマンの死』(長塚圭史演出)『女の一生』(段田安則演出)『黒白珠』(河原雅彦演出)『リトル・ナイト・ミュージック』(マリア・フリードマン演出)など。03年文化庁芸術祭賞演劇部門大賞、04年読売演劇大賞最優秀男優賞、21年菊田一夫演劇賞大賞、22年毎日芸術賞を受賞。2010年紫綬褒章受章。23年旭日小綬章受章。


【公演情報】
風間杜夫ひとり芝居
『カラオケマン ミッション・インポッシブル ~牛山明、バンコクに死す~』
作・演出:水谷龍二
出演:風間杜夫
●10/11〜17◎東京公演 本多劇場
〈料金〉一般前売 6,000円 一般当日 6,500円 U-25[25歳以下]3,000円 シニア[60歳以上]5,500円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
※U-25・シニア券はトム・プロジェクトのみで販売。要身分証明書。前売当日とも同料金
〈チケット取扱〉各プレイガイド
トム・プロジェクト 03-5371-1153 
http://www.tomproject.com/

《各地公演》問い合わせは各地会館まで。 
●9/27(金) 18:30◎北海道苫小牧市苫小牧市文化会館
(教育委員会生涯学習課)0144-32-6756
●10/3(木) 14:00◎神奈川県平塚市ひらしん平塚文化芸術ホール 大ホール0463-79-9907
●10/6(日) 14:00◎東京都江戸川区江戸川区総合文化センター 小ホール 03-3652-1106


【取材・文/久田絢子 撮影/田中亜紀】

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