「タメで集まって芝居したいね」から始まった! 赤澤燈・荒牧慶彦・植田圭輔 インタビュー
舞台タメ劇vol.1『タイムカプセル Bye Bye Days』が1月9日から26日まで新宿・紀伊國屋ホールで上演中だ。
1989年、90年生まれのタメが集まって作った作品がこの舞台、タメ劇vol.1『タイムカプセル Bye Bye Days』。
中学時代の同級生うみおの通夜に集まったトモキ、ゆーぼー、ノブ、やっちんは、かつてみんなでタイムカプセルを埋めた日に、うみおと喧嘩し疎遠になってしまったことを後悔していた。あの日のタイムカプセルを探そうとしたところ、トモキは20年前にタイムスリップ。うみおと疎遠になる運命を回避し、友情を取り戻すためにタイムリープしまくるドタバタハートフルコメディの結末は──。
主演を務めるトモキ役の赤澤燈、企画・プロデューサーでうみお役の荒牧慶彦、演出、ゆーぼー役の植田圭輔という同い年トークは、お互いへの信頼やリスペクトに溢れていた。
発売中のえんぶ2月号に掲載されている3人へのインタビューを公開する。
僕らの世代にはいい役者が揃っている
──「タメ劇」という企画がはじまったいきさつを教えてください。
荒牧 僕たちは集まると、同い年の俳優って何人くらいいるんだろう? というような話をよくするんですよ。それで僕らの世代にはいい役者が揃ってるんじゃないか? なんて言ってたんです(笑)。
植田 とくに僕たちの年代は人数のみならず素敵な役者が集まっている。
赤澤 しかも息が長い。辞める人が少なくて、20歳くらいから15年、俳優の仕事を続けている人が多いんだよね。
荒牧 僕と植ちゃん(植田)がそういう話をしているなかで、タメで集まって芝居したいねという話が出たことがあって。でもその企画を本格的に進めることなく、宙に浮いたままの状態だったところ、僕が舞台の企画をやることになったときに植ちゃんとした話を思い出して。植ちゃんには演出もやってもらおうと声をかけたんだよね。
植田 僕は演出をやるのがこれで2度目だけれど、演出もやっていきたいと思っていたので、今回、任せてもらえて嬉しい。
──そこから赤澤さんに声をかけた?
荒牧 まずこの男(赤澤)に声をかけないわけにはいきませんよ。
赤澤 そりゃあかけて当然でしょ! …なんて(笑)。かけていただきありがとうございます。
植田 ビッグマウスだけど少し噛んだところに人のよさが出ているよね(笑)。
荒牧 僕たち、人柄のよい世代だからね(笑)。
赤澤 同い年の役者がたくさんいるなかで、この企画に声をかけてもらえたことはとっても嬉しくて、二つ返事でOKしたら、主演と言われて驚いて。でもタメだから横一線でやれたらいいな。
──脚本の亀田真二郎さんについては?
荒牧 亀田さんは年上です。でもノリはタメみたいなものかな(笑)。
植田 年齢は違うけれど、すごく仲良いしね。
──トモキ、うみお、ゆーぼーとそれぞれの役は当て書きの部分があるのでしょうか。
植田 脚本打ち合わせをしたときに、僕たちの意見も取り入れてもらっていますが、亀田さんから見た我々の姿が反映されているところはあると思います。
赤澤 トモキのフルネームが茜沢智樹(あかねざわともき)で、僕は赤澤燈(あかざわともる)。名前から考えると、亀さんがそんなに自分と遠くない人物像を書いてくれたのかなって。自分と似てると思うのは、トモキは際立った個性がないところ。僕もアクが強くないんで。トモキもそんなタイプの人間で、そんな彼が事件に巻き込まれたり、巻き込んだりする様が面白いのだろうなと。だから役になりきるというよりも、自分の人柄のいいところも悪いところも100%出せるといいのかな。
荒牧 うみおは…。
赤澤 うみおって植ちゃんでしょ?
植田 違うよ。
荒牧 植ちゃんっぽい役だけれど違うんだよ。
赤澤 俺、植ちゃんがうみおで、まっきー(荒牧)がゆーぼーだと思って台本を読んでた(笑)。植ちゃんは演出も務めるのに、大変じゃない?
植田 そうなんだよ(笑)。ネタバレになるので、あまり話せないけれど。
──荒牧さんはうみおについては?
荒牧 台本を読んで、5人組のなかでは独特の性格の持ち主なのかなという印象を持ちました。これは植ちゃんと相談しながら作ろうと思っていて。トモキ以外は、明確なキャラ付けがされているわけじゃないので、それぞれどう色付けしていくか、役者の個性にかかっているなと。これは稽古で作りあげていく作業になるよね。
植田 演出家としては、まっきーが言うように、台本上ではキャラに色分けがないので、会話のなかにアドリブぽいところを増やしたいというオーダーをしていくことになりそうです。僕が演じるゆーぼーは、自分に近いかと言われると半々かな。ゆーぼーは5人のなかでいうとたぶん、前に出てまとめるっていうタイプの人間で。僕も、場がとっちらかっていると、もういいよ、俺やるわってその場をまとめるみたいな役割を担いがちなので。
精神年齢は基本的に中高生のままだから
──タイムスリップもので、登場人物の35歳時代と中学時代が行ったり来たりすることが面白そうです。
荒牧 打ち合わせでいろいろな案を出したなかで、一番いいねと盛り上がったのがタイムスリップものでした。どういう物語にするのかいろいろ話し合った結果、舞台タメ劇vol.1『タイムカプセル Bye Bye Days』が出来上がったんだよね。
植田 僕はハートフルなコメディをやりたいと強く主張していて、それを反映してもらえたので嬉しい。
赤澤 35歳の大人が、過去の思い出を追い求めてジタバタドタバタする場面は熱量とか体力的な意味で演じるのは大変だろうなと。いっぱい喚いて、わーきゃーやっていると35歳の辛さが自然と滲み出るんじゃないかな(笑)。
──35歳と中学生の演じ分けは舞台上でどう演出する予定ですか。
植田 自分たちで言うのもなんですが、僕ら童顔なので(笑)中学生時代も無理なくやれると思うんです。正直、昔と顔が変わっていないし、なんならいまのほうが若いくらいじゃない? ただ、さくちゃん(櫻田)だけは、中学生役はどうなるか(笑)。
荒牧 いや、櫻田さんみたいな中学生っているよ(笑)。男性の精神年齢はいつになっても中学生。もちろん責任感は強くなっていくけれど、基本的には中高生のままなので演じやすいのではないかな。クラスの男子がバカなことをしているのを微笑ましく思って見ているお客さん、というのがコンセプトのひとつだからね。
植田 デフォルメしたほうが面白いところは思いきりやることもあると思うけれど、僕は基本的には、35歳と中学生を極端に切り替えてやってほしいというオーダーはしないだろうと思う。プレイヤーとしての自分もそうだけれど、もともと決め打ちで稽古に入りたくないというのがあって。今回の出演者はみんな個性があるし、勝手知ったる仲間たちなので、だいたいの枠だけ決めたら、あとは自由にやってみようと、みんなで一緒に作っていく感じにしてみたい。
荒牧 植ちゃんは打ち合わせの段階で、すでに僕の想像以上に手腕を発揮していて。僕は企画・プロデュースをやるようになって、これまでも様々な打ち合わせに参加してきて、打ち合わせは演出家さんの色が出て面白いなと思っているけれど、植ちゃんは、稽古に入る前からここまで先回りして考えているんだ! って誇らしいよ。
赤澤 僕は共演したことがある人に演出してもらう経験が今回はじめてで。しかも同時に役者としても共演するというなかなかない経験だと思う。「タメ劇」って冠がついているので、ふだん、ほかの現場では言ってもらえないようなことも、言ってほしいな。
植田 もともと俺たち、プレイヤー同士でよく話すもんね。それの延長線上になりそうだね。
赤澤 いい意味でね。
荒牧 僕たち、穏やかな世代なので(笑)、声を荒げたり、意見を闘わせたりというような感じではないよね。
「ゆとり」世代とその前後のいいとこどりで
──年代が近い同士で作・演出をやったり俳優やったりというのは、学生演劇みたいな感じなのでしょうか。演劇部の経験などはありますか?
赤澤・荒牧・植田 ないです。
赤澤 中学は野球部、高校は帰宅部でした。
荒牧 高校ではテニス部でした。
植田 僕はサッカーやってました。
──野球とサッカーのポジションは。
赤澤 セカンドでした。
植田 キーパー以外全部経験しています。
──中学のときは何をしていましたか。
植田 ゲームやったり外で遊んだりとか。
赤澤 チャリに乗ってたよね。
荒牧 チャリで遠出した。それまでは自分の住んでいる街が活動範囲だったのが、少し大人ぶって遠出をしはじめた年頃で、僕はチャリでお台場まで行ってたよ。1時間以上かけて。たどり着けたら成し遂げた感があって、ちょっとした冒険気分だった。
植田 カラオケが流行りだした頃だよね。小学校のとき同級生とカラオケに行く文化がなかったけれど、中学生になってお年玉をもらうようになったらカラオケに行くようになった。クラスや学年で歌のうまいやつが目立ってきた頃、僕は声変わりしてカラオケから遠ざかってしまったけれど。
赤澤 当時、お年玉の最高額いくらだった?
(ここからしばしお年玉の話などで盛り上がる)
植田 タメってこういうので急に盛り上がるんだよね(笑)。
──穏やかで人柄のいい世代と荒牧さんが先ほど言っていました。89〜90年生まれは、「ゆとり」世代などと言われることがありますが、ご自身ではどう感じますか。
荒牧 「ゆとり」って言われてました。
植田 でもど真ん中ではなく、ゆとり教育を途中から受けた世代だよね。
赤澤 第2、第4土曜日は授業があったし。
荒牧 その前のやり方と後のやり方にはさまれて、その間をうまく縫う方法を考える世代なんだろうね。
植田 いいとこどりのハイブリッドなんだと思う。あと少し早く生まれていたら昭和生まれだったのか……。
荒牧 平成元年、時代の始まりと共に生まれたってかっこいいよね。過渡期に生まれたことは学びという意味ではよかったな。猪突猛進しないで人間としてどう生きるべきか熟考することを環境が教えてくれたから。
──考え方がしっかりしていますね。
赤澤 ほんとに悪い人がいないんですよ。だから、この仕事を辞める人も少ない気がしていて。
植田 ほんとうに人数が多いんだよね。
赤澤 俳優という仕事は続けていくのが難しい気がするし、別れってつきものだと思うけれど、僕らの世代にはそれが少ない。たとえ共演はしてなくても、どこかで元気に俳優活動をしていると聞くだけでも元気になるんだよね。
──企画、プロデュースをしたり演出をやったり俳優一筋だったりと、三者三様ですが、これからのビジョンはありますか。
荒牧 僕はこの業界の最前線に立ち続けたいと思っています。いわゆる原作のある作品を舞台化するような世界が大好きなので、そこに誇りをもって。バラエティなどもやっていますが、メインフィールドはここだと思っていますので、その学びで得たもの、プロデューサーで学んだことも多く、俯瞰能力やまわりを見る目が養えるので、それを後進たちにも伝えながら、この業界を盛り上げていきたいです。
植田 僕も役者を志して、いろいろな役を演じてきて、途中から見つけたものが演出でした。今回2度目の演出をやれることになりましたが、軸はプレイヤーです。演出をやることで、スタッフと話す機会が増えて、作る過程がいかに大変かと知ることができる。そういう体験を、まっきーと同じになりますけど、役者の仕事に還元したいです。
赤澤 僕は楽しければなんでもいいかなって!
荒牧・植田 すばらしい。
赤澤 つねにお芝居を楽しみ続けられればいいなと思っています。
【プロフィール】
あかざわともる○東京都出身。2011年「ミュージカル『テニスの王子様』」2ndシーズンの芥川慈郎役で注目され、以降、舞台を中心に活躍中。最近の出演舞台は、『文豪とアルケミスト戯作者ノ奏鳴曲(ソナタ)』、東映ムビ×ステ 舞台『仁義なき幕末 -令和激闘篇-』、劇団ホチキス『明後日のガラパゴス』、Casual Meets Shakespeare 『OTHELLO SC』、二人芝居『追想曲【カノン】』、ワーキング・ステージ『ビジネスライクプレイ3』、宮下貴浩×私オム プロデュース 『愚れノ群れ』、歌絵巻『ヒカルの碁』序の一手、Casual Meets Shakespeare 『MACBETH SC』など。
あらまきよしひこ○東京都出身。2012年にミュージカル『テニスの王子様』で本格的に俳優デビュー。代表作は舞台「刀剣乱舞」、舞台「ゲゲゲの鬼太郎」など。ドラマ、バラエティなどでも幅広く活躍し、2022年より舞台・イベントのプロデュースも手掛ける。最近のプロデュース・出演舞台は、剣劇『三國志演技〜孫呉』、Experimental Theater『結合男子』、『Club ドーシャ』、舞台『ハンドレッドノート〜暗闇に消えた月〜』、『演劇ドラフトグランプリTHE FINAL』など。
うえだけいすけ○大阪府出身。2006年の第19回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストのファイナリスト。2022年、舞台『はじまりのカーテンコール~your Note~』では初の原案・演出を担当。ドラマや映画、アニメやゲームの声優業でも活躍。最近の出演舞台は、 MANKAI STAGE『A3!』 ACT2! WINTER 2024、舞台『刀剣乱舞』心伝 つけたり奇譚の走馬灯、『東京リベンジャーズ-天竺編-』、『ワールドトリガー the Stage ガロプラ迎撃編』など。
【公演情報】
舞台タメ劇vol.1『タイムカプセル Bye Bye Days』
脚本:亀田真二郎
演出:植田圭輔
音楽:Yu(vague)
振付:川隅美慎
企画・プロデューサー:荒牧慶彦(Pasture)
出演:赤澤燈 荒牧慶彦 植田圭輔
櫻田佑(トンツカタン) 冨森ジャスティン 他
●1/9〜26◎紀伊國屋ホール
〈公式サイト〉https://stage-tmgk.com/
【インタビュー◇木俣冬 撮影◇中村嘉昭 ヘアメイク◇akenoko▲ スタイリング◇MASAYA(PLY)(赤澤燈)、ヨシダミホ(荒牧慶彦、植田圭輔)】