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(雑誌『演劇ぶっく』は2016年9月より改題し、『えんぶ』となりました。)
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【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第164回「ダメ出し再び」

 現在、私は2/14に幕を開ける「FOLKER」という舞台の稽古中です。久しぶりに後藤ひろひとさんの作品に出演し、超久しぶりに後藤ひろひとさんの演出を受けています。大阪発信の企画というコトで関西に所縁のある出演者が多く、稽古場では関西弁が飛び交っておりますよ。いや、作品内ではほとんどが標準語なのですけれども。

 でね、そのような演劇の現場において重要な作業の一つに「ダメ出し」というモノがありまして、以前にもこの連載で書きました(UFB:41)。そして今回もこの「ダメ出し」について書いてみたいと思っているのですよ。え? おなじテーマでもう一度書くの? ええ、同じテーマでもう一度書くのです。
 といいますのも、最近になりましてこの用語が話題になっているのです。近年、全ての職種で就業時のコンプライアンス遵守が求められるようになりましたよね。様々なハラスメント行為に対する目が厳しくなってきました。演劇界でも同様です。
 もちろん暴力や不快な言動はもってのほかですが、先輩からの演技の指導なども高圧的に取られる可能性もありますので難しいところです。あくまでも提案程度に留めておかなければなりません。
 ただ、演出家の場合はその作品のクオリティを保つ責任があります。それが故に時によってはキャストやスタッフに対して強い言葉で指導をしてしまう場合もある可能性があるのが悩ましいところです。もちろん最近ではほとんどの演出家もかなり気を遣った言い回しをするようになっておりますが、これはもう実に難しい問題です。
 そんな演出家の演技指導のメインとなるのがこの「ダメ出し」なのです。

 ダメ出しという言葉は今では一般的に使われる様にもなってきておりますが、元々は演劇用語です。演劇界に於いては「演出意図と違う演技をしている俳優に対して修整を求める」という意味なのですが、日常会話では「欠点や過失を指摘する」時に使われていると思います。
 でね、昨今ではこのダメ出しという言葉が色々と取り沙汰されているようなのです。多分、この言葉の「ダメ」の部分が問題となっているのではないでしょうか。演劇ではその演技が、日常ではその行為が、「ダメッ」って言われているような感覚になるのかもしれません。
 また、日常でダメ出しをすると大勢の人々の前で叱責を受けている状況になってしまうのも問題点の一つです。とはいえ、演劇の現場でダメ出しをする時には、今の演技や操作の何が演出意図と異なり、どのように改善すべきかというのは全スタッフ・キャストに周知する必要があるために、全員の前で行わなければならないのも悩ましいところ。決して怒っているワケではないのですけれどもね。

 先日に参加させていただきました、キャラメルボックスの西川浩幸さんと岡田達也さんが開催しているオンライン配信座談会「東京砂漠」でもその話題になりました。やはり演劇関係者もみんな気にしているのですよ。ですので、最近の演劇現場ではダメ出しのことを「チェック」とか「ノート」とか「リクエスト」などと呼び替えることも増えてきました。

 ただですね、我々演劇人にとっては長年使ってきた用語ですので、ついつい未だに使ってしまいがちなのですよね。もちろん最近演劇界に入ってきた方が不快に感じるのならば改めなければなりません。慣れるのにちょっと時間が掛かるかもしれませんけれども。
 しかし! 実はこの「ダメ出し」の「ダメ」という言葉は囲碁用語の「駄目」から来ているという説もあるのです。囲碁の世界では、黒石側でも白石側でもなく、どちらの陣地でも無い目のコトを「駄目」というようでして、終局時にそれぞれの陣地を確認する時には邪魔になるので、判りやすくするために駄目を埋めていくことを「駄目出し」とも言うのだそうです。
 つまり、ダメ出しというのは「あなたの演技はダメだよ」と言っているワケではなくて、「適切ではないので無駄な部分を取り除いてスッキリさせましょう」という前向きな言葉なのです。そう考えると、この「ダメ出し」という用語もなかなか良い言葉であるような気もしてきますか? きませんか? どうなんでしょうか。

 まあ、言葉というのは時代と共に変化していく物なので、変化を怖がってはいけません。より多く使われる言葉が主流になっていくものですので、そうなったらそうしましょうとも。

本文とは関係ありませんが、先日世田谷区の弦巻通りで見つけた「大山詣の途中で休憩をする人」のモニュメント。子供たちは怖がらないのでしょうか。

プロフィール

粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み

【出演予定】
大阪国際文化芸術プロジェクト「FOLKER」
2025年2月14日(金)〜23日(日祝) 堂島リバーフォーラム
https://osaka-ca-fes.jp/project/event/folker/

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