「四国こんぴら歌舞伎大芝居」製作発表記者会見レポート
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第三十八回「四国こんぴら歌舞伎大芝居」が本年4月4日~20日に、旧金毘羅大芝居(金丸座)にて上演される。その製作発表記者会見が1月下旬に行われ、レポートが到着した。
「四国こんぴら歌舞伎大芝居」は、天保6年(1835年)に建築された現存する日本最古の本格的芝居小屋である旧金毘羅大芝居(金丸座)にて、昭和60年(1985年)6月の初公演以来愛されている歌舞伎公演。今回は中村萬壽、中村獅童、中村時蔵、中村萬太郎、中村陽喜、中村夏幹、澤村精四郎、河原崎権十郎、中村錦之助が出演し、第一部は『毛谷村』『魚屋宗五郎』、第二部は『蜘蛛の拍子舞』『らくだ』を上演する。
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琴平町の片岡町長は、多くのファンからの期待があるという同公演について「江戸時代の天保6年、1835年に建てられました旧金毘羅大芝居が190年という記念の年ですし、40年前に第一回が始まったということで、今回の公演は何かと記念の年。190年前、江戸時代の芝居小屋でのお江戸の歌舞伎の世界を、多くの皆様方にご堪能いただきますようお願い申し上げます」と紹介。
金刀比羅宮の琴陵宮司も「いち歌舞伎ファン、“歌舞伎大好き宮司”として、非常に喜んでおります。本当にこの歌舞伎がずっとずっと末永く続きますよう、皆様方のご協力をいただきまして、よろしくお願いしたいと思います」と期待を寄せた。
松竹の山根副社長は、琴平の町民からも「獅童に来てほしい」という声があったことを明かし、加えて「時蔵さん、萬太郎さん、そしてなんと萬壽さんも出ていただけることになりまして、非常に豪華な一座での公演となりました」と説明した。
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10年ぶりの「こんぴら歌舞伎」出演となる中村萬壽は、妻菊実は葛城山女郎蜘蛛の精を演じる『蜘蛛の拍子舞』に挑戦。「私が尊敬しております六代目(中村)歌右衛門のおじさまが、ご自身の勉強会で復活上演されたもの。最近では(坂東)玉三郎のお兄様がよくおやりになって、それはシネマ歌舞伎でも上映されたことがございます。色々資料を集め、隈取なども考え、この劇場の力を借りながら一所懸命勤めたいと思っております」と意気込んだ。また、これまでにも別の役で出演してきた『魚屋宗五郎』では、初役の磯部主計之助を演じることに。「2000年の6月に主計之助をなさった二代目(中村)吉右衛門のお兄さんが本当に素晴らしかった。そのお兄さんの主計之助を思い浮かべながら演じようと思っております」と目標を掲げる。
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中村獅童は、実はプライベートの家族旅行で琴平を訪れ、金丸座にも見学に行ったことがあるという。第一部で出演する『魚屋宗五郎』は「去年の6月に歌舞伎座でやらせていただきまして、(尾上)菊五郎の兄さんに教えていただき、『こういった世話物の芝居はなかなか1回だけで手に入るものじゃないから、何回も何回もやった方がいいよ』というアドバイスをいただきました。1年経たないうちにまたこうしてやらせていただけることを、非常にありがたく思っております」とコメント。また、第二部の『らくだ』は「演目の相談をする中で、琴平の方は笑ったりする明るいお芝居が好きだと聞き、決まったお話です。私の子供も2人出演いたします。少しでも町の方に喜んでいただけたら嬉しく思います」と語った。息子の陽喜、夏幹の反応について聞かれると、獅童は「『セリフはあるの?』と言っていました。『いや、あるよ』と。結構出たがりなので、これから一所懸命稽古してやるんじゃないかなと思っています」とかわいらしいエピソードで笑いを誘った。
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10年ぶりの「こんぴら歌舞伎」となる中村時蔵は、『毛谷村』『魚屋宗五郎』『蜘蛛の拍子舞』に出演します。「私は一足お先に今月(新国立劇場で)『毛谷村』お園を初役で勤めさせていただきました。各地に様々な演出が残っている芝居でございますので、とても芝居小屋に合っている演目です。弟より一足先に私が1度勤めましたので、少しでも力になってあげられるようにと思っております。言いたいことも言い合える仲でございますので、兄弟でしか出せないような色が出たらいいなと思っております」とアピール。
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「こんぴら歌舞伎」初出演の中村萬太郎は、「子供の頃からずっと出たいと思っていた」と嬉しさをにじませ、「『毛谷村』の六助という、いつかやってみたいと思っていた大きな役をこの金丸座で勉強させていただけることも合わせて、本当に役者冥利につき、ありがたいと思っております。このありがたい気持ちを、観に来ていただきましたお客様に少しでも還元できればと思っております」と気合い十分。一方、2度目となる『蜘蛛の拍子舞』については「(前回は)本当にもう、出たての未熟な10代の頃でございまして、皆様に怒られ、怒られの毎日で。今回はリベンジだと個人的には思っておりますので、少しでも成長した姿を皆様にお見せできれば」と、気持ちを新たに挑む。
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改めて「こんぴら歌舞伎」の魅力を聞かれた獅童は、「やっぱりお客様との距離じゃないでしょうか。セリや回り舞台が全て手動という、昔ながらの劇場で現代になってもお芝居がやれるというのは、非常に貴重なことだと思いますし、そういった劇場を我々ももっともっと大切にしていかないといけない。私自身もそういった日本古来の劇場で大切なお役を演じさせていただいて、微力ながらもお役に立てればという気持ちでございます」と答えた。
また獅童は「萬屋一門、小川家がこれだけ集まって芝居ができるということに、本当に胸がいっぱいの思い」と心境を吐露。「萬壽のお兄さんが『(こんぴらに)俺も行くよ』と言ってくださった時、とっても嬉しかったですね。やはりどこか父親のようといいますか、萬屋の長でございますから」と、時折言葉を詰まらせつつ、「年のせいか、そうこうするうちに目頭がちょっと熱くなってきてしまいまして……」と明かす一幕も。「(萬屋一門を支えてきた)祖母も喜んでくれているんじゃないかなと思います」と感慨深い様子だった。
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【公演情報】
第三十八回「四国こんぴら歌舞伎大芝居」
2025年4月4日(金)~20日(日)【休演】10日(木)
劇場:旧金毘羅大芝居(金丸座)
●第一部 午前11時~
『毛谷村』『魚屋宗五郎』
●第二部 午後3時30分~
『蜘蛛の拍子舞』『らくだ』
出演:中村萬壽 中村獅童 中村時蔵 中村萬太郎 中村陽喜 中村夏幹 澤村精四郎 河原崎権十郎 中村錦之助
〈一般発売日〉2月15日(土)
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/other/play/924