30-DELUXの代表作『デスティニー』間もなく開幕! 瀬戸かずや×鈴木達央×清水順二 インタビュー

新しい『デスティニー』は最高傑作になります!
ドラマチックな物語性と華やかなアクションで魅せる30-DELUXの代表作『デスティニー』が、『デスティニー -アドラメレクの鏡-』として12年ぶりに再演される。
主演はこの作品の初演・再演を経て三度目となる佐藤アツヒロ。さらに今回は今江大地、鈴木達央、宝塚出身の瀬戸かずやをはじめとする多彩なキャストが集結した。
物語は小国「ライカ」と大盗賊団「ゴンタル」の戦いの中で、死を前にした1人の男ジンが悪魔シャイターンと契約する。そしてテムジンとなり、「ライカ」の英雄へと登りつめていく姿と、それによって「ライカ」の王女ユミンをはじめとする登場人物の「運命」が変遷するさまを描いている。
その作品で王女ユミン役を演じる瀬戸かずやと、悪魔シャイターン役の鈴木達央、そして、30-DELUX主宰で劇中では語り部役をつとめる清水順二がこの公演について語り合った「えんぶ4月号」のインタビューをご紹介する。
瀬戸さんは「これは私の役ではありません」と
──『デスティニー』は、沢山の登場人物で描くダイナミックな物語を、息もつかせぬテンポで見せていく、まさにエンターテイメントの王道を行く作品ですが、今回、瀬戸さんと鈴木さんにオファーした理由は?
清水 僕は23年間、劇団のプロデュースをしてきましたが、ただ人気があるとか話題だからというのではなく、実際に舞台を見たうえで出ていただきたい方、うちの劇団に合う方にお願いしているんです。今回の瀬戸さんですと、宝塚時代の『マスカレード・ホテル』や『はいからさんが通る』なども拝見していましたが、退団後に「舞台『刀剣乱舞』禺伝 矛盾源氏物語」で光源氏を演じていた。それを観て、今回の『デスティニー』では、ユミンを現代の強い女性として表現したいという思いがあったので、瀬戸さんにお願いしようと。でも瀬戸さんは前の公演の映像を観て、「これは私の役ではありません」と(笑)。それで「いや、今回はもっと強い女性に書き直す予定なので」とお話しして。もちろん男役をされていた強さに加えて、本来の女性としての美しさやちょっと儚い部分もある方なので、そのへんも今回のユミンの魅力になると思っています。
瀬戸 私は男役でしたので、ユミンは王女ですし私の役ではないと思ったんです。でも清水さんが、今回は強い女性になりますとおっしゃって。たしかに国を守るために女性ということを捨てて生きている人ですし、また今回は弟もいる設定になって、より人間ドラマも深まるということで、そういう様々な葛藤の中で信念を持って生きていくユミンを演じさせていただけるのは幸せなことだと思いました。
──そして、悪魔シャイターンを演じる鈴木さんは、なんと本格的な舞台は約12年ぶりだそうですね。
鈴木 最初は何かの間違いではないかと(笑)。僕が誘ってもらう理由がないし、長い間そういうところから離れていましたので。でも声の世界で僕が25年間培ってきたものが、もしかしたら違うスパイスとしてお役に立てるならと。もともとお芝居は好きですし、周りからお誘いを受けることもあったので、改めてこれからの自分を考えたときに、新しいフィールドを摑みに行ってみようかなと。それに声の作品でも悪魔や何かの化身という役は演じてきたので、それを生身の体を使って演じられることはすごく楽しみです。実は声でそういう役を演じているときに、思わず動いてしまって注意されたこともあって(笑)、今回は気にしないで縦横無尽に動きたいですね。
清水 僕は昔、テレビアニメの『DEAR BOYS』を観ていて鈴木さんのお名前は知っていたんです。そのあと、L’Arc〜en〜Cielの曲をカバーしているのをYouTubeで拝見して、「なんだ! このすごい表現力とパワーは!」と。
鈴木 いやー、勘弁してくださいよ!(笑)
清水 それに去年出演されていた朗読劇『ROOM』を拝見する機会があって。演劇も好きそうに見えたので出ていただこうと。前回シャイターンを演じてくれた森田成一さんも素晴らしかったのですが、さらに面白い存在になりそうです。
鈴木 ちょうど先日、森田さんにお会いする機会があって、この話をしたら「え、やるの? めちゃ似合いそうでやだな」と(笑)。それに「僕も出たいな」と(笑)。
タイトルにある「アドラメレクの鏡」の意味とは?!
──シャイターンはアツヒロさんのテムジンと行動をともにする役ですが、アツヒロさんの印象はいかがですか?
鈴木 まだ稽古前なのであまりお話はしていないのですが、とても芯のある方ですし、きっと沢山のエネルギーをいただくだろうなと。僕はこの作品のビジュアルになっているテムジンの2つの姿に感動したんです。生身の体でこれだけ違う表現ができるんだと。僕は声でならいろんな表現に応えられるのですが、やはり生身のお芝居は久しぶりなので、アツヒロさんはもちろん皆さんの演技で置いていかれないように。でもそれ以上にワクワクしながら皆さんの稽古を楽しませてもらうつもりです。
──瀬戸さんもアツヒロさんとの場面が沢山ありますね。
瀬戸 ずっとこの世界の第一線で活躍してこられた方で尊敬しかないです。でもやはり緊張感があります。私は小さい頃、いつも光GENJIの歌を歌っていたので(笑)。
清水 僕に「これは私の役ではありません」と言ったあの強い瀬戸さんが、ビジュアル撮影でアツヒロくんと一緒になったとき、「あ! アツヒロさん! よろしくお願いいたします!」と、いきなり乙女になってましたからね(笑)。
瀬戸 見られてしまいました(笑)。この物語は、戦いの中で国の情勢がどんどん変わっていきますし、沢山の人物が登場してくるのですが、その1人1人の浮き沈みとか葛藤がちゃんと書き込まれているんですよね。そういう中で、ユミンも登場するたびにテムジンへの思いがどんどん変化していくので、ユミンが出ていない場面での皆さんのバトンをどう受け取って変化していくか、そしてブレない芯を持ち、どんな状況でもなお前に進むユミンの強さをどう表現していくか。難しいけれどやり甲斐があると思っています。でも王女としてテムジンにけっこう強く言うセリフもあって、私は見かけによらずノミの心臓なので(笑)。
清水 え、そうですか??(笑)
瀬戸 (笑)私の中で戦いがありそうです。
清水 瀬戸さんは両方持ってますよね、超がつくぐらい繊細なところと超がつくぐらい強いところと。前回までは敵のゴンタル軍のほうが個性的でチームワークもあり、親しみやすかったんです。ですからライカ国側の魅力をより際立たせるためにユミンのキャラだけでなく周辺の人物設定も変えたり、増やしたりしました。これでライカ側もより膨らんだと思うので、両方とも魅力的な2つの軍が運命的な戦いをするという面白い形になると思います。
──清水さんの役も伺いたいのですが、今回初めて登場する語り部で、「実は」という役だそうですね。
清水 その「実は」という部分をドンデン返しに使っていきたいと思って、今、作家と詰めています。今回のタイトルにある「アドラメレクの鏡」はそういうことね、みたいになるように。
鈴木 マーベルのデッドプールみたいなものですよね。お客さんともコミュニケーションをとるし、物語の中にもどんどん入っていく、みたいな。
清水 鈴木さんはいつも喩えが百点だよね(笑)。今回はそういう新しい『デスティニー』を、アツヒロさんをはじめとする東京勢と、30-DELUXが2021年から始めた名古屋と大阪での製作で出会った各都市のスターの方たち、そしていつもの素晴らしいクリエイティブスタッフとともに作りますので、30-DELUX最高傑作になるのは間違いないと思っています。ぜひ観にいらしてください。

■PROFILE■
しみずじゅんじ○愛知県出身。中京大学体育学部卒業後、会社員、高校教師を経て、日光江戸村でアクションをメインとしたイベント・舞台に出演。97年、俳優升毅率いる劇団MOTHERに入団し、中核俳優として活躍。02年に30-DELUXを立ち上げ、製作総指揮・殺陣師・俳優の三役をこなしながら、外部の舞台・映画も積極的に参加。15年には初の海外公演をロンドンで行い、17年にはフランスの「JAPAN EXPO」に参加、それぞれ高く評価された。23年には映画『まくをおろすな!』を初監督した。
せとかずや○東京都出身。04年宝塚歌劇団に入団、花組に配属。大人の男性が演じられる男役スターとして、『マスカレード・ホテル』(主演)など多くの作品で活躍、21年『アウグストゥス-尊厳ある者-』『Cool Beast!!』で宝塚を退団。以後、舞台を中心に活動中。最近の出演作品は、『RUNWAY』舞台『マリオネットホテル』 Song Show『Ivory』 ~Fallait pas le dire~『それを言っちゃお終い』Ⅷ. ~ドラマ・リーディング~朗読劇「ラストダンスは私に」〜岩谷時子物語〜 Musical『TRACE U』「舞台『刀剣乱舞』禺伝 矛盾源氏物語」など、
すずきたつひさ○愛知県出身。声優。最近の主な出演作にテレビアニメ『 NieR:Automata Ver1.1a』『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-Rhyme Anima』『THE NEW GATE』『青の祓魔師』、『七つの大罪』『範馬刃牙』『ケンガンアシュラ』『グリム組曲』『最強陰陽師の異世界転生記』『Fate/Grand Order 藤丸立香はわからない Season2』など。演劇の舞台は、朗読劇『ROOM』音楽朗読劇『陰陽師』に出演。2009年〜22年、アーティストとしても活躍。

【公演情報】
30-DELUX Special Theater 2025
『デスティニー -アドラメレクの鏡-』
作:毛利亘宏
脚色・演出:林明寛
出演:佐藤アツヒロ/吉原雅斗 鈴木達央 瀬戸かずや/今江大地 北川尚弥(東京・福岡・大阪公演のみ出演) 川上千尋 IMO*T 村瀬文宣/森田晋平 足立英昭 設楽 賢(名古屋・埼玉公演のみ出演)/亀田結心 竹之内景樹 田沼ジョージ 寺田遥平 中村悠希 津山直紀 永易大空/田中 精 我 膳導/緒月遠麻/清水順二 他
●4/18〜27◎東京 サンシャイン劇場、
●5/3・4◎福岡 久留米シティプラザ ザ・グランドホール、
●5/16〜18◎大阪 サンケイホールブリーゼ、
●5/23~25◎愛知 アマノ芸術創造センター名古屋(名古屋市芸術創造センター)、
●5/28◎埼玉 さいたま市文化センター 大ホール
〈チケット問い合わせ〉stage.contact55@gmail.com
〈公式サイト〉https://30-delux.net/destiny2025/
【取材・文/宮田華子 撮影/中田智章】