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(雑誌『演劇ぶっく』は2016年9月より改題し、『えんぶ』となりました。)
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田中稔彦・田中尚輝インタビュー

田中尚輝 田中稔彦

シリーズの面白さとカンパニーの強さを堪能できる第三弾!

舞台『新宿羅生門』戒援隊編が、8月にこくみん共済coopホール/スペース・ゼロで上演される。本作は新宿を舞台に繰り広げられる新感覚の転生伝奇アドベンチャーゲームの舞台化で、時空を超えた運命の再会、戦いを通して深まる友情や絆、志半ばで倒れた幕末武士の怨念などを哀しく美しく描き出す。第三弾となる今回の「戒援隊編」で物語の中心をつとめる、勝聖舟役の田中稔彦と岡田零役の田中尚輝に、このシリーズの魅力や「戒援隊編」の見どころなどを語ってもらった。

初めましてのギラギラ感がこの作品をいいものに

──舞台『新宿羅生門』は2023年に始まって、今回は第三弾となります。第一弾はゲームのリリースより先に舞台化されましたが、おふたりがこの作品に出会ったときの印象から話してください。

稔彦 最初はまず、この作品のさまざまな設定をみんなで共有するところから始まりました。稽古場に各キャラクターや物語の世界観の設定が紙で貼り出されていて、それを演出家を中心にみんなで共有しながら、ゼロから作り上げていきました。第一弾では新徴組抜刀隊という集団が物語の中心だったので、僕たちの所属する戒援隊は、まだあまり具体的に描かれていなくて。そこでどうしたら自分たちのチームが作品の中で存在感を出していけるかを考えて、結局ちょっとお笑いの方に流れました(笑)。

──重めな世界観の作品ですが、笑える場面もちゃんと入っているのがいいですよね。稽古場の雰囲気はどんな感じでしたか?

尚輝 最初はみんなバチバチしていましたね。僕も初めましての方が多かったんですが、年齢とか仕事のフィールドがわりと近いので、お互いに勝負している感じというか(笑)。向こうのチームがカッコいいアクションをしたら いや、俺らのチームの殺陣もかっこいいぜみたいな。ちょっと部活っぽかったですね。

──おふたりも初共演だったのですね?

稔彦 あれが初めてだっけ?
尚輝 初めてです。同じ戒援隊の坂本旭役の井阪郁巳も同い年ですけど、初めましてで。そういう意味では全員のちょっとギラギラしたものが、この『新宿羅生門』がいい作品になるきっかけだったんじゃないかなと思います。

──今回は戒援隊が中心の回ですが、戒援隊の役割というのは?

稔彦 基本的に治安を守る組織で、例えるなら新徴組は警察で、戒援隊は自衛隊かな。「修羅」という怪異と戦うのが主な役目です。ほかに第二弾でメインに描かれた薩長エージェンシー、それに神誠プロダクション、全部で4チームあります。

──登場人物のキャラクターにも背景があって、それぞれの「前世の記憶」は幕末にあるそうですね。

稔彦 僕は勝聖舟という役ですが、前世は勝海舟です。登場するキャラクターたちはそれぞれ思い残したものがあって現代に蘇ってきたわけですが、聖舟の場合は上様への思いですね。これまでの2作でもずっと上様、上様と言っていたように、上様を復活させたいという思いをずっと持っている。そこ一点に彼の思いは集中しています。
尚輝 僕は岡田零という役で、前世は岡田以蔵です。以蔵は土佐勤王党で武市半平太に命じられて暗躍しているうちに人斬り以蔵と呼ばれるようになってしまった。そんな過去がこの作品の中ではちゃんと描かれているので素敵だなと。お金のために人を斬るみたいな描かれ方をすることもあったので。この作品の岡田零はすごく仲間思いで、戒援隊のために戦うし、熱い忠誠心を持った男として生きているので、すごく嬉しいし、やり甲斐があります。

全チームが総力を挙げて戦うことになる

──この舞台はそんな人物たちのドラマの面白さとともに、アクションシーン、とくにスーツでの立ち回りが見せ場ですね。

稔彦 最初の稽古のときに、剣術にはいろいろな流派があるので、殺陣師の方がその役柄に合った刀の抜き方、納刀の仕方、刀の振り方などの指導をしてくれたんです。そのとき、例えば納刀しやすいように刀を回したりすると、「回さないで納刀してください」と。くるっと回すとカッコよく見えるんですが、そういうのは禁じられました。
尚輝 片手斬り禁止とか。
稔彦 「両手でやりなさい」ってね。尚輝も言われたよね?
尚輝 最初言われました。でも両手はやったことがあるのですぐ出来ました。

──スーツで殺陣を綺麗に見せるのもたいへんなのでは?

稔彦 そうですね。スーツでの殺陣のほうが、粗が目立ちやすい気がします。袴は捌きの難しさはありますけど足が隠れますから。でもスーツは足のシルエットが全部見えてしまう。そういう意味でも事前に流派ごとの刀の扱いとかその流派の癖とか、そういう講義の時間を設けてくれたことがすごくためになりました。

──すでに二作を共演してのお互いの魅力も話してください。

稔彦 尚輝は芸歴が長いのにお芝居に対してすれてないんです。その役に対しての熱い思いと、お客さんに対する思いがちゃんとあって。役者って一人よがりになりがちというか、自分の芝居をやるだけの人もいれば、お客さんに見せるためだけにやる人もいる。尚輝はその両方のバランスが取れていて、お芝居に対してちゃんと向き合い、かつお客さんを楽しませる。そのためにはお笑いの部分も一生懸命やる。その辺の感覚が自分はとても共感しやすかったし、一緒にやっていて楽なんです。
尚輝 稔くんと初めてご一緒した時からずっと感じているのは、脚本の読解のスピードとセンスがずば抜けていることで。例えばちょっと脚本に違和感を持ったとしても、稔くんぐらいのスキルがあれば全然やれるんです。でもその読解がすごいからこそ、この役は絶対ここは守らないとやれないよね、このセリフだとこの役の心情は通らないよね、みたいなことを誰よりも気づいて、ちゃんと演出とか脚本のスタッフさんたちと話をして、進むべき道に正していく。そういうところがすごく演劇人だなと。そんなふうに作品の軸を通すことをすごく大事に考えてくれる人が同じチームにいることが、僕はすごく助かるなと思っています。


──最後に、観てくださるお客さまへのアピールをお願いします。

尚輝 先ほど刀さばきの話も出ましたが、今回、もしかしたら『新宿羅生門』史上で一番立ち回りの数が多いかなと思っています。しかも戒援隊だけでなく、全チームが総力を挙げて戦うことになるので、よりカンパニー力が試されるし、三作目だからこそ出せるこのカンパニーの土台の強さみたいなものを、存分に堪能していただけるのではないかと思います。そして一作目と二作目で「あれは何だったんだろう?」と思っていた部分も回収していける物語になっていますので、ぜひ熱い夏を一緒に過ごしていただきたいです。
稔彦 何よりもずっと謎を抱えてきた戒援隊の謎が明かされることが、最大の見どころかなと思っています。そしてそこに付随するドラマ、戒援隊はもちろん他のチームにもそれぞれドラマがあるので、その面白さと男たちがスーツを着て刀を振るうカッコよさにしびれる夏になると思います。期待してください。

プロフィール

たなかとしひこ○和歌山県出身。俳優・映画監督。2011年、舞台『DEAR BOYS -Double Revenge-』で俳優デビュー。主な出演作品は、2.5次元ダンスライブ『S.Q.S スケアステージシリーズ』QUELL和泉柊羽役、『遙かなる時空の中で6』里谷村雨役、『真・三國無双 赤壁の戦い』荀彧役など。初監督・脚本・出演・撮影・編集・プロデュースした長編映画『莉の対(れいのつい)』(2024年)で第53回ロッテルダム国際映画祭 最優秀作品賞・タイガーアワードを受賞。

たなかなおき○兵庫県出身。主な出演作品は、【映画】「プリンセス・トヨトミ」「男女逆転 大奥」「るろうに剣心」、劇場版「田園ボーイズ」、【舞台】ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』、『僕のヒーローアカデミア』シリーズ、舞台『鬼神の影法師』シリーズ、「2.5次元ダンスライブ」シリーズ、舞台『HOUSE〜7人の地縛霊〜』、『1995117546』、F=D produce. First『街のちっちゃなレストラン』など。

このインタビューは雑誌「えんぶ」2026年8月号より転載)
インタビュー◇嶋田真己

公演情報

舞台『新宿羅生門』戒援隊編

作◇ALTERGEAR「新宿羅生門プロジェクト」
演出◇橋本昭博
脚本◇風之宮そのえ(花梨エンターテイメント)
上演台本◇萩原成哉
出演◇井阪郁巳 田中稔彦 田中尚輝/中島 健 瀬戸啓太 橋本全一
沖野晃司 日向野祥 塚本凌生 阿部快征/佐藤たかみち 益永拓弥
宮城紘大 兼崎健太郎/金子 昇 ほか
映像出演◇新谷聖司

8/9〜16◎こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ  
http://askcoltd.com/rashomon-stage