【ノゾエ征爾の「桜の島の野添酒店」】No.128「USJとTDS」
一月の間に、西と東の大テーマパークに行ってきた。
初めてのUSJと、15年ぶりの東京ディズニーシーである。
もうすぐ5歳の息子はいずれも初となる。
まずはU S J。着いたU S Jの駅でエスカレーターに乗りこむと、とあるカップルがエスカの歩く側の途中で立ち止まっていた。
後ろから来た黒ジャケットの若い男性が「早く行けやコラィ!」などと怒鳴り散らした。怒鳴られたカップルの女の子がゆっくりと振り向き、顔を紅潮させた黒ジャケ男と目を合わせる。女の子は彼氏に報告し、カップルはゆらりと進み始めた。うっすらと聞こえたその言葉は日本語ではなく、どうやらカップルは、アジアからの旅行者だったようだ。
かわいそうに。楽しみにしてきた日本のUSJでいきなり怒鳴られるとは。
怒鳴った男の後ろには、恋人の女性がついていっていた。恋人さんは、そんな喚き散らす彼をかっこいいと思っているのだろうか、それともちょっとイヤだなと思っているのだろうか。まあどっちでもいいけど、大阪ではこんなのは超日常だと聞くと少し萎えてしまうのだった。
平日狙いで月曜日に行ったのだが、入るとそこには、わんさかと人がいた。特に子供達。小学校などが運動会の振替休日だったことに、やがて気がついた。
にしてもすごい混みようだった。休日以上に混んでいたかもしれない。
遊園地における人口密度、私史上最高だった気がする。
息子の好きなマリオのエリアにも人数締め切りでもう入れない。そもそもそこへ入れるチケットも、高額なお金を積んでようやくゲットできるらしい。なんたることだ。
気が滅入りそうな状況に、10月とは思えない強烈な日差しがさらに襲いかかる。
ふと友人の言葉を思い出した。
その友人は、数年前に家族でネズミーランドに行った時に、あまりの混みように茫然自失。お子さんに宣言したらしい。お父さんは今世ではもう行きません。行きたいならお父さん抜きで行ってくださいと。
一瞬そのような言葉も喉元まで出てきそうなほどだったが、初めてだったのもあったのか、なんだかんだ、実は、とても楽しかったのだ。
息子も汗水垂らして駆けずり回っている。よかったよかった。
ただ、暗くなってからが良くなかった。小さいお子様には特に。
ハロウィーン期間だけなのだが、ゾンビがあちこちに出没するのだ。しかもこれが異常に怖い。明かりも暗い。ホラーな音楽も流れている。そして大人でも恐怖なハイクオリティな本気ゾンビがあちこちに出没する。女性の叫び声があちこちで上がる。
息子が絶叫する。早くここから出て!早く!!早く!!!
私は息子を抱っこしてクレイマー・クレイマーのダスティンばりに走る。
ゾンビが来ないであろうお店に駆け込む。息子を落ち着かせる。ゾンビが来ないエリアもあるようだからそこに行こう。
ようやくお店の外に出てみるも、視界にどうしてもゾンビの雰囲気が飛び込んでくる。息子の限界だった。帰るぅぅぅ!!! 我々は早めに帰路に着いた。
4歳の息子を、最終的に恐怖心で埋め尽くしてなんてことしてくれるんだと少々憤ったものだが、ハロウィーンじゃない時にまた来ようね、また来たいねということで息子の気持ちがおさまったのでよかった。
進化し続けるアトラクションのクオリティにもかなり感激した。
ハロウィーンには懲りたかと思えば、今度は、ハロウィーン期間中にどうしても東京ディズニーシーに行きたいと言い始めた。
もうすぐ5歳。この年頃にしか楽しめないものも多いだろうと、あと、少し早めの誕生日プレゼントも兼ねて、ハロウィーン終了のギリギリのタイミングで行くことにした。
やはり同じく平日狙いだったわけだが、ハロウィーン期間の最終盤なので混むのは覚悟の上。だったのが、意外や意外、いやもう、ほぼ奇跡的なレベルで、かなり空いていた。
乗りまくった。
しかし夢の国でも世の中金か。払えば並ばずに乗れるチケットがあるのだが、にしても高い。しかし何時間も並ぶのなら、一つや二つくらいなら買うのも仕方なしか、でも悔しいな・・なんて余計な心労を抱えないでいいくらいに空いていた。
最終的に17ものアトラクションに乗っていた。
流石に疲れた。乗れすぎて、終盤は有り難みも薄まっていった気がする。
しかし、ここTDSでもやはり、アトラクションの進化に驚愕したのだった。
特に、「ソアリン」というわりと新しめのアトラクション。
まあーびっくりしたこと。
もう時代はここまで来たのかと。近未来に飛び込んだような気分。
あまりの絶景に足もリアルに震えたし、感激に細胞がガタガタと震えたもんだ。
で、つまるところ、二つの大テーマパークはどうだったのかと言うと、こうして長尺のコラムを書かせるほどだった、というわけなのである。
著者プロフィール
ノゾエ征爾
のぞえせいじ○1975年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の1999年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。2011年の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。
【次回予定】
朗読劇「鳥ト踊る」
脚本・演出:ノゾエ征爾
11月27日(月)〜30(木)
@I`M A SHOW(有楽町)
https://sunrisetokyo.com/detail/24613/
▼▼前回の連載はこちら▼▼
https://enbutown.com/joho/2023/10/18/nozoe127/