【植本純米vsえんぶ編集長、戯曲についての対談】『夜明け前』テレンス・ラティガン(翻訳:能美武功)

植本 今回はイギリスの劇作家テレンス・ラティガンの『夜明け前』です。
坂口 プッチーニの歌劇『トスカ』のパロディーですね。
植本 どうしてこれを選らんだの?
坂口 何となくこの作品の批評をみたら、ぼろくそにいわれていて「じゃあやってみよう」って。
植本 え?
坂口 そんなに言われてんだったら、もしかしておもしろいかなと思って。

【前略】
1973年9月27日、ダチェス劇場で初日が行われた。以下にその批評を書いて置く。
 イヴニング・スタンダードのミルトン・シュールマンは、「死という題材をこのように陽気に取り扱って、作家の腕を揮ってはいるが、とても彼の重要な作品とは考えられない」と。タイムズはもっと厳しい。「出だしにしか見えない芝居に、行ってみろと勧めることは到底出来ない」と。ガーディアンのマイケル・ビリントンはラティガンの称賛者なのだが、「有名なラティガンの職人芸も、一時休止のように見える。・・・単に観客操作の作品で、雑なものである」と。最も酷い批評は、ファイナンシアル・タイムズのマイケル・コーヴニーで、「過去の栄光に頼っただけの・・・名声という旗印のもとに陳列された機知のない塵芥である」と。【後略】
(St. Martin’s Press社, Geoffrey Wansell 著 Terence Rattiganによる。)(能美武功 平成11年6月9日 記)より引用。

植本 これプッチーニの歌劇『トスカ』のパロディだから。『トスカ』を分かんないとなかなか(笑)。
坂口 いやいや(笑)。主な出演者は3人ですね。スカルピア男爵と、
植本 ローマ市の警視総監で典型的な悪者ね。
坂口 あと、シアッローネ大尉。
植本 コメディリリーフ、呆けてるのね。この人と話すとうまく話が通じないって言うか・・・。
坂口 そしてご存じの歌姫トスカ。
植本 ネタ元は歌劇『トスカ』ですからね。

【前略】《トスカ》は初演のちょうど100年前にあたる1800年のローマが舞台となっている。ナポレオンによって作られたローマ共和国がたった2年で倒れローマ教皇領に戻ったばかりの頃、フランス革命の思想に傾倒した画家カヴァラドッシと恋人の歌姫トスカが、警視総監スカルピアの奸計にはまり命を落とすまでの物語だ。フランスの劇作家サルドゥの戯曲が原作で、当時の名女優サラ・ベルナールが演じる「ラ・トスカ」の芝居をプッチーニが観たことがオペラ化へのきっかけとなった。【後略】
(ONTOMO/井内美香の「すべての道はオペラに通ず」第2回)より引用

坂口 先にサラ・ベルナールが出演した芝居「ラ・トスカ」があって、それをプッチーニが観てオペラになって、さらにラティガンがそれを踏まえてパロディ『夜明け前』を作った。いい流れですね(笑)。メディアミックスとはちょっと違う、地に足の付いた魂の連鎖がありますよね。

植本 前半は普通に悲劇に進みそうで、途中からコメディになってく感じですかね。
坂口 トスカの恋人が脱獄した政治囚の逃亡を助けたとして捕まっちゃってローマの教会?に監禁されています。
植本 画家のカバラドッシですね。
坂口 歌劇では活躍する彼ですがこの作品では表舞台にはでてこない。
植本 トスカは色恋が多い感じが読むと伝わってくるでしょ、その中で初めで出会った禁欲的な人で(笑)。トスカがベタ惚れでね。
坂口 始めの方はスカルピア男爵っていうローマの警視総監、悪名轟くっていう感じの人が、俺は悪役だっていう風なアピールを散々します(笑)。

【ト書き】
 登場人物
  スカルピア男爵
  ジウゼッペ・・・下僕
  シアッローネ大尉
  トスカ

(場 ローマ。)
(時 一八00年六月十七日 夜明け前。)
(サンタンジェロ城の一室。右手に扉・・・後になって分かるが、これは寝室へ通じる。扉の前に階段あり。左手にも扉。これは観客からは見えない。但しこれを開け立てする時には、必ず閂を外したり入れたりする猛烈な音が聞こえる。)
【中略】
(際だっているのは食卓。テーブルクロスが敷かれ、かなり贅沢な夜食の用意がされている。部屋は暗くて陰気。)
【中略】
(簡単に言うと、サルドーのトスカの四幕、あるいは同名のオペラの二幕に似ていればそれでよい。何故なら、テーブルで現在食事を取っているこの男はスカルピア男爵と言い、かの有名な悪役であり、一九世紀悪漢の典型。 鼻髭を蓄えた、誇り高き「美人漁り」。お仕着せを着た下僕に給仕をさせている。)
【後略】
(Alan Brodie社版 テレンス・ラティガン著 能美武功翻訳『夜明け前』)より引用

植本 簡単に言うと、トスカの恋人がね、政治犯として処刑されそうになっている。それを止めるようにスカルピア男爵にたのむと彼は交換条件で「お前をくれ」みたいなね。
坂口 そこまでのやり取りもおもしろい。とぼけたシアッローネが出てきてスカルピアとコメディタッチで悪巧みの打ち合わせをしたりして盛り上げます。

【前略】
シアッローネ(ノートと鉛筆を取り出して。)えー、これを書き留めておいてよろしいでしょうか、閣下。なかなか込み入っているようですので。
【中略】
スカルピア こんなものが予め書いて置けるか、馬鹿者。あの女の気持がまだ私には分かっておらんのだ。
シアッローネ ああ、成程。だんだん分かってきました。
スカルピア(呟く。)このドアホ。
シアッローネ(明るく。)こうすれば紛らわしい混乱はすべて避けられます、閣下。実行に移すべきでない命令を下される時に、閣下が私に目配せをして下さればいいんです。
スカルピア(早口で。)うん、それはうまい考えだ。「死刑執行兵達に空砲を詰めさせろ。」
(スカルピア、オペラでやる大きな目配せを行なう。)
シアッローネ いや、閣下。もっとはっきりした合図でなければ・・・これは非常に微妙な問題です。一婦人の名誉に関わることであり、また一男性の命にも関わることであります。閣下も私にここでそのー・・・大チョンボをやらかすことをお望みではないでしょう。ハンカチを落とすとか・・・何かそんな工夫を・・・
スカルピア 分かった。ハンカチを落とす。必ずはっきり分かるようにしてやる。心配するな。女を通せ。
【後略】
(Alan Brodie社版 テレンス・ラティガン著 能美武功翻訳『夜明け前』)より引用

坂口 全体的に昔風のコメディに作られていて面白いですね。
植本 読んでるだけだとわかりづらい所もあるけど、見たら一発でわかるかもね。本物の『トスカ』にも出てくる場面もあるしね。
坂口 そうこうしているうちに、迫ってくるスカルピア男爵をトスカが背中からナイフで何回も刺す、でもスカルピアは死なない。歌劇「トスカ」では刺し殺しちゃうんですけどね。
植本 彼が防弾チョッキみたいなのを着てるから刺しても刺しても死なない。
坂口 この場面は元の話を知ってるといいですね。やった、と思ってワクワクして見ていると、実はスカルピア男爵は死んでないという。

【前略】
(スカルピア、再び机に向かう。トスカ、さっと飛び掛かり、力いっぱいスカルピアの背中をナイフで突く。抜いては突き立てる。その時に叫ぶ。)
トスカ 血にまみれた女たらし! 恥知らず、恩知らずの悪党! 人非人! 好色漢! おお、復讐!(訳註「ハムレット」(第二幕、第二場)福田恒存訳)
(ナイフは容赦なくスカルピアの背中に突き立てられる。しかし何の効果もないように見える。五回ほど攻撃を受けた後、スカルピア、立ち上がり、トスカに丁寧に書類を渡す。)
スカルピア これが貴女の旅行通行証。(スカルピア、上着を脱ぐ。と、下に防弾チョッキとおぼしき、表面が革製の胴着。)こいつはなおしに出さんといかんな。このところ二度ばかり女性に、同じ様にやられたんだが、チョッキにはかすり傷一つつかなかった。いや、あっぱれな力ですな、トスカ。たいしたもんだ。
(スカルピア、防弾チョッキを脱ぐ。完璧な礼儀正しさで寝室の扉を開け、中へ導く動作をする。間。トスカ、扉の方へ行く前にマリアの像に御辞儀をする。)
スカルピア(微笑む。)革命に忠誠をつくす者としては、理性の女神だけに礼を捧げるんじゃないかと思っていたんだが?
トスカ こんな事態になって、理性の女神に何が出来るって言うの。
(トスカ、スカルピアの前を通り寝室に入る。)
スカルピア(同情をもって。)成程、そういう事になるか。
(スカルピア、トスカに続く。)
(照明暗くなるにつれて、時計、大きく三時をうつ。暗闇の中で短い間。この間観客には近くの教会堂で修道僧がミサを歌っているのが聞こえる。その声も微かになり、三十分過ぎた事を時計が知らせる。)

(照明がつく。 間あり。トスカ、ゆっくりと寝室から出てくる。髪の毛がやや乱れていて、イヤリングを口にくわえてはいるが、その他は入って行った時のトスカとあまり違わない。スカルピア、ゆっくりトスカの後について出てくる。今は左の胸に男爵の印のある夜着を着ている。)
スカルピア なあ、トスカ。もう一度言うが、これは昨夜食べたもののせいだ。
トスカ それとも働き過ぎね。夜勤がいけないのよ。
【後略】
(Alan Brodie社版 テレンス・ラティガン著 能美武功翻訳『夜明け前』)より引用

坂口 結局二人は寝室に行くんですが、結局うまく行かない。
植本 スカルピアが不能状態になり。そこから形勢逆転というか・・・途端にトスカが強くなります(笑)。
坂口 この立場が逆転するのもわかりやすくていい、と僕は思いました。
植本 それでね、一回戦はダメで。でもこの悪者スカルピアはどうしても二回戦に持ち込みたい、となるんだけど「無理なんじゃない?」とトスカの方から言われたりしてます(笑)。
坂口 その間にシアッローネ大尉が出たり入ったりして、混ぜっかえしていく、飽きないですよね
植本 ベッドインに対しても「もう終わったんですか?」ってからかったりしてね。

【前略】
(隣の部屋からトスカの静かな歌声が聞こえる。Vissy d’Arte.「歌に生き、恋に生き」のアリアである。)
シアッローネ 成程。あの人はいないと。するとややこしい事はなしだ。やれやれ。(ノートを取り出す。)先程の御命令によれば、ここで帰宅のための馬車を用意する。もうお楽しみは終、御用済みで・・・
スカルピア まだだ、馬鹿もん! エー、つまりその、馬車はまだだ。
(トスカの歌声、少し大きくなる。)
シアッローネ(驚く。)ええっ? まだ?
(シアッローネ、「ははあ」と思い当たる。)
シアッローネ(感にたえたように。)ははあ、アンコールで、はあー。
スカルピア 馬鹿、何がアンコールだ。シアッローネ、お前に打ち明ける事がある。これは絶対の秘密だ。
シアッローネ これは光栄であります、閣下。(ノートを取り出す。)
スカルピア ノートなどいらん。やれやれ、そんなメモが軍法会議のメンバーの手にでもわたってみろ・・・
シアッローネ 分かりました、閣下。(ノートを収める。)証拠がなければ事実なし、ですから・・・あ、失礼。これはナポリの兵隊達がよく言う言葉で・・・
(トスカの声、もっとはっきり聞こえてくる。)
スカルピア シニョーラ トスカは国家にとって今や危険人物となっている。
(シアッローネ、トスカの声にうっとりと聞きいっている。)
スカルピア(鋭く。)聞いているのか、シアッローネ。
シアッローネ 申し訳ありません、閣下。しかし、なんていう奇麗な声。あれは何を歌っているんですか。
スカルピア うん、どうやら、自分が如何に人生を歌に捧げ、愛に捧げたかをだな・・・
【後略】
(Alan Brodie社版 テレンス・ラティガン著 能美武功翻訳『夜明け前』)より引用

坂口 「歌に生き、恋に生き」有名なトスカが歌うアリアが入りますね。その中でスカルピア男爵とシアッローネのとぼけたやり取りがいいですね。気の利いた漫才のようでおもしろい。
植本 能美武功さんの翻訳で上手にやり取りが描かれていますよね。
坂口 その流れで、カラバドッシ処刑の場面になりますね。

【前略】
(下から急に、テノールの大きな笑い声が聞こえる。)
トスカ 品のない声だわ。真の革命家っていう声じゃない。いつか注意しなくちゃ、機会があったら。
(下からまたシアッローネの命令を怒鳴る声。太鼓が再び鳴る。)
マリオ(舞台裏。甲高い声。フランスの国歌を歌う。)
   Allons, enfants de la Patrie!
   Le jour de gloire est arrive.
   Contre nous de la tyranie
   L’etendard sanglant . . . . . . . .
  (進め、祖国の若者よ。
   栄光の日は来た。
   我々を潰そうと、暴虐の王の
   血塗られた旗が・・・・・)
(シアッローネ、命令を怒鳴る。)
マリオ 

   est leve.
  (上げられた。)
(歌声が無残にも中断される。一斉射撃の音がし、すべてを沈黙させる。暫く死んだような静けさ。その後、シアッローネの、命令を怒鳴る声。兵士達が刑場から引き上げる音。)
トスカ ああ、なんていう倒れ方なんでしょう。本当に撃たれたとしか思えないわ。そうでしょう? 男爵。
スカルピア(少し心配になって。)本当に撃たれた・・・としか・・・
トスカ 大尉さん、近づいているわ。立ってもいいって言っているところ。
(長い間。)
トスカ ああっ。マリオの額! まあ、あれ・・・血・・・血じゃないの。
スカルピア 血のようだな、どうやら。
トスカ ああ・・・蛇、がまがえる。悪魔、十倍も呪われた気違い。
(トスカ、芝居で最も典型的な気絶の場を演じる。スカルピア、あまりに気がかりで、トスカの倒れたのに気づかない。)
スカルピア シアッローネ・・・どうしたんだ。まずい事になったのか。
シアッローネ(舞台裏で。)ちょっと筋書きと違いまして、閣下。
スカルピア 馬鹿もん! それぐらいの事は、ここから見て分かる・・・
シアッローネ(舞台裏から。)どうも一斉射撃の音で気絶したらしいです。そして頭を打って・・・そう・・・気がついてきました、閣下。見て下さい。(マリオに言う。)いいか。一、二の三。ほーら、立って。どこも怪我はなしと。いいか、馬車が用意してある。君はそれに乗るんだ。まづレグホーンに行って、そこからイギリス行きだ。
【後略】
(Alan Brodie社版 テレンス・ラティガン著 能美武功翻訳『夜明け前』)より引用

植本 処刑の一斉射撃は空砲なんですね。カバラドッシはその音にビックリして気を失って石かなんかに頭を打つんです。
坂口 彼は気絶していただけなんですね。
植本 トスカもカバラドッシが死んだと思って気絶しちゃうんだけどね。
坂口 そのあとスカルピア男爵とトスカは、仲良くなるっていうか寝ちゃうんでしょ?
植本 寝ちゃうね。
坂口 素晴らしい展開だね。トスカは色事一般に対しては興味があると言ってますからね、でも急展開。
植本 なんだろうね、敵味方ではあったけど、なにか一つの出来事を二人で経験して何かが生まれたんですね(笑)。
坂口 いいじゃないですか、自由度があって 。元ネタが悲劇ですからね。

【前略】
(この時までにスカルピア、気を失ったトスカに近づいて、やっとのこと体を持ち上げ、ソファに横たえ終わっている。)
 スカルピア(トスカの顔を叩く。)トスカ・・・トスカ。目を覚ますんだ。うまく行ってるんだ。
(トスカ、気絶したまま。困ってスカルピア、トスカの扇から二、三本羽根を取って、蝋燭で燃やし、トスカの鼻のところへ持って行く。この間にスカルピア指を火傷し、「くそっ」と言う。トスカ、目を開ける。)
【中略】
(この時までにスカルピア、自分の夜着の紐を解き始めている。)
トスカ 忘れないわね、男爵、あの約束を。これからは、高貴な形の愛しか求めないのよ。
スカルピア 忘れるものか、トスカ。私の人生はこの瞬間から、精神世界の模範となるんだ。
(スカルピアの夜着、たいした困難もなく滑り落ちる。スカルピア、熱烈にトスカにキス。トスカ、抵抗しない。スカルピア、優しくトスカの衣装を脱がせ始める。)
トスカ(間の後。)二十八あるって言っていたわね、キューピッド。
スカルピア いや、二十六だ。二十八は寝室。
トスカ(夢見るように。)二十六の方がいいわ、私。(トスカ、ほとんど衣装を脱がされている。)
(シアッローネ、急に登場。旅装。手袋をはめている。この一夜の中で最も自分に自信のある態度。今回はうまくやったという確信あり。)
シアッローネ 閣下?・・・(部屋を見回す。)閣下?・・・トスカ殿の馬車が着きましたが・・・

(間。)
スカルピア(長椅子の上から。)分かった、シアッローネ。よくやった。一旦送り返せ。夜明け前に出直せと言え。
シアッローネ(困って。)しかしもう夜明け前でありますが・・・
スカルピア 違うぞ。俺が言うまでは、まだ夜明け前ではない。
シアッローネ で、それは何時頃で? 閣下。
スカルピア すぐかもしれん。すぐかもな・・・しかし今じゃないんだ。下がれ! 用ができたらベルを鳴らす。
シアッローネ はっ、閣下。(扉に進む。それから思い出し、立ち止る。また例のノートを取り出す。)閣下、私がどのくらい外で待てばよろしいか、およそのところを・・・
スカルピア 一生だ。
シアッローネ(ノートに書き留めながら。)イッショウ・・・と。分かりました、閣下。多分意味は掴めていると信じます。
スカルピア お前がか? 俺にも分からんのに。行け!
(シアッローネ、ノートをしまい、靴をかちんと鳴らし、退場。)
トスカ(呟いている。)二十二、二十三、二十四・・・
(トスカの唇、スカルピアの唇により閉じられ、最後まで数えられない。)
(暗転。)
(Alan Brodie社版 テレンス・ラティガン著 能美武功翻訳『夜明け前』)より引用

植本 トスカ役は歌える人にやってほしいですね。
坂口 オペラの決まり文句みたいな台詞もありますしね。
植本 そう、くさく、本物っぽくやってほしい。
坂口 三人、それらしい人がやったらいいんですよね。
植本 そうですね。あの・・・
坂口 宝塚の人じゃだめかな?
植本 良いんじゃない。
坂口 これ宝塚のバウホールでやったらいいんじゃない?
植本 劇場指定だ。
坂口 三人芝居だからさすがに大劇場ではきびしいかな。
植本 そうね。
坂口 昔ね、宝塚で榛名由梨さんが演った『無法松の一生』を観たんですよ。
植本 すごいね。
坂口 最初から最後まで涙が止まらなかったです。この作品とその『無法松の一生』とどうつながるのか、自分でもよくわからないですが、なぜか思い出しました。
植本 でもさ、この作品はいわゆる二枚目でてこないじゃん、だから専科の方とかにやってもらって(笑)。
坂口 いやいやトップスターでいけます。宝塚は懐が深いですからね。
植本 (笑)。
坂口 歌舞伎の人でもいけるかもね。スカルピアは市川團十郎で。
植本 あ〜俺が想像してるより若いですね。
坂口 トスカ役は歌うたえないとだめだね。
植本 うん。トスカはできる人いそうだな。
坂口 きっといますよね。
植本 すごいまとめかた、歌舞伎か宝塚って。
坂口 濃い方がいいね。
植本 濃い方がいいね。
坂口 今日はそんな感じで。
植本 はい、歌舞伎か宝塚で。
坂口 是非やってもらいたいです。
植本 はい、ありがとうございました(笑)。

プロフィール

植本純米
うえもとじゅんまい○岩手県出身。89年「花組芝居」に入座。以降、女形を中心に老若男女を問わない幅広い役柄をつとめる。外部出演も多く、ミュージカル、シェイクスピア劇、和物など多彩に活躍。同期入座の4人でユニット四獣(スーショウ)を結成、作・演出のわかぎゑふと共に公演を重ねている。本年10月に花組芝居を退座。

坂口真人(文責)
さかぐちまさと○84年に雑誌「演劇ぶっく」を創刊、編集長に就任。以降ほぼ通年「演劇ぶっく」編集長を続けている。16年9月に雑誌名を「えんぶ」と改題。09年にウェブサイト「演劇キック」をたちあげる。

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