ミュージカル界のトップ女優・望海風斗が全国コンサートツアー『Hello,』を、3月20日に日本青年館ホールにてスタートさせた。またツアー初日の3月20日にはポニーキャニオンより「Breath」の音楽配信も開始となった。さらに3月25日にはダイジェスト動画も公開された。(https://youtu.be/LickvClWh8M

2021年8月~10月に開催された『SPERO』、2022年10~11月に開催された『Look at Me』以来となる3度目の全国ツアーで、今回は東名阪福で全22公演を開催、2万人以上を動員する。3月25日まで8公演が満員御礼にて閉幕した『Hello,』。東京公演のライブレポート、および 初日に行われた囲み取材の様子が届いた。

ライブレポート》 
開演5分前、にぎやかな開演前のアナウンスが始まった。出演者たちの声でリレーしてゆき、望海の「皆様、手拍子、ご声援、ペンライト、準備はいいですか?」の声で、客席のテンションが上がっていくのがわかる。
暗転し、スポットライトで、バンドメンバーやシンガー、ダンサーの面々が、ひとりひとり浮かび上がる。そして「Hello!」という軽快な挨拶とともに、ドラマティックコンサート『Hello,』の幕が開いた。現れた望海は、肩の開いた春らしい柔らかなピンク色のシアーなトップスに、オフホワイトのパンツ、白のロングブーツ姿。満面の笑顔での1曲目は「POP STAR」。ダンサーたちに囲まれ、ハンドマイクで歌いながら躍動感のあるダンスで会場の熱を上げてゆく。続く「真夏の夜の夢」「あゝ無情」で、さらに伸びのあるパワフルな歌声を響かせたかと思うと、一転し、いきなり軽快な祭り囃子に。威勢のいい「ワッショイ!ワッショイ!」の掛け声とともに、櫓を思わせるセットに上がった望海は、ペンライトを手に「お祭りマンボ」を熱唱。会場はお祭りムードに。

「あらためまして皆様、本日は望海風斗ドラマティックコンサート『Hello,』にようこそ!」と挨拶すると、「春に開催するということで、私にも皆さんにも素敵な出会いがありますようにという願いを込めて」と、今回の『Hello,』という公演タイトルについて説明。そして、「コロナ禍で知らず知らずのうちに凝り固まっているココロを、このショーの間に解放していただいて、いろんな感情をぶちまけて、すっきり帰っていただけたら」と、そこに込めた想いを語った。

「宝塚歌劇団を卒業して4年目の春、そして初舞台を踏んでから21年目の春を迎えるということで、21年目を迎える前に、少し懐かしい自分と再会してみようかなと思っています」。そう言って流れ始めたのは、「勝手にしやがれ」のイントロ。赤いサテンのジャケットを羽織り、白いハットとサングラスをかけて登場すると、先ほどとは一転、男役時代の望海風斗へ。歌声も男役当時の低音ボイスに切り替え、往年の名曲を哀愁をもって歌い上げた。そして一瞬の静寂。そこに現れたダンサーが手にする一輪の赤いバラに魅入られるように歌い出したのは、ミュージカル『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』の「愛は枯れない」。情感の込もった歌が、かつての舞台を想起させ、最後の「デボラ…」の呟きが、ステージ上に余韻を残す。

次に現れた望海は、サテンの黒のベストにベルベットの黒のパンツスタイル、タイトにまとめた髪で、シックでマニッシュな印象。バンドメンバーと絡みながら「Top of the world」を伸びやかに歌い上げる。続く「Money,Money,Money」「Sir Duke」「Hound dog」の洋楽メドレーでは、迫力あるパワフルボイスで圧倒するばかりでなく、ノリのいいロックサウンドダンサーたちとのキレのよいダンスで、会場のボルテージを一気に上げた。
「子供の頃から好きだったカーペンターズや、これをやったら盛り上がるんじゃないかと思って取り入れた曲もあります」と洋楽メドレーの選曲の説明をした後、先ほどの「なつかしい自分との再会」について語り始める。きっかけは、去年出演した雪組pre100th Anniversary『Greatest Dream』のコンサートに出演したことなのだそう。「辞めて初めてOG公演に参加することになり、コンサートとはいえ自分は男役に戻れるのかなと思っていたんですよね。稽古当初は、久々の男役で大股で歩くのも恥ずかしかったけれど、いざ始まってみたら、自分にはないかもしれないと思っていた男役スイッチが入って、大股で歩くのも気持ちよくて。今回はそのスイッチを使ってコンサートをやってみようと思いました。私は男役スイッチを手に入れたぞ!」そういって望海が拳を掲げると、会場は拍手喝采。

そしてステージの上は“演劇的”世界へ。「私は役者として舞台に立っています。舞台に立っているとたくさんの刺激を受けることができます。日常では起こせないことが起こせるからです。たとえば、私が手を挙げると明かりが絞られ、スナップをすると警笛がなり、私が右を向くと男が現れる」――。黒のジャケットに黒いハットを被ると、再び男役スイッチがオン。そこにダンサーが登場すると、望海のナレーションに合わせてパフォーマンスを見せる。そこでちょっとしたムチャブリを加える望海に、笑いながらも応えていくダンサーとの絶妙な連携が微笑ましい。そんな中、哀愁漂うサックスの音色が流れ出す。「摩天楼のジャングル」はクールにかっこよく、「Love Can't Happen」はドラマティックに、「アマポーラ」はロマンティックに。1曲ごとにドラマが立ち上り、まるで芝居の1シーンを見ているようだった。シックなムードから一転、「Look at Me」の明るいイントロが流れ出したと思うと、出演者全員が舞台上に集結してのメンバー紹介へ。多幸感溢れるムードに、カンパニーのチームワークの良さを感じる。


そこから再び訪れた静寂の後、登場した望海は、白く光輝くエレガントなドレス姿に変身。歌ったのは、
『ジーザス・クライスト=スーパースター』の「I Don't Know How To Love Him」、『ディア・エヴァン・ハンセン』「Waving Through a Window」。ミュージカルでは男性の役が歌う楽曲を聴けるのも、コンサートという場ならではだ。

続くMCでは、宝塚時代に出演した『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』の思い出を交えつつ、今回演出を手がける桜木涼介が、当時「摩天楼のジャングル」の振り付けを担当していたこと、そして今回また新たな「摩天楼のジャングル」の振り付けを考えてくれたことを紹介。そして今年2月まで出演していたミュージカル『イザボー』の話題に触れ、その流れで劇中で披露した「Queen of the Beats」を歌唱。たっぷりの声量で聴かせながらも、舞台とは違う表現で、曲の新たな表情を見せてくれた。
『イザボー』では役を通じ、生き抜いていく強さを学んだと語る望海。そして、昨年演じた『ドリームガールズ』のディーナ役との出会いからは、一歩踏み出す勇気をもらったとも。そして最後の曲『ドリームガールズ』の映画版でディーナが歌った「Listen」に。この曲は、ミュージカルを映画化するにあたって新たに書き下ろされたもので、昨年の舞台では歌われていない楽曲。ディーナは、夫でありマネージャーでもあるカーティスから精神的に独立し、本当の意味での自分自身の歌を見つけていくが、それをまっすぐな力強い歌声で届けてくれた。

鳴り止まない拍手の中、アンコールは、コンサートTシャツにデニムという、ラフなカジュアルスタイルに。そこで披露したのは、今回のコンサート開幕初日にメジャーリリースされた「Breath」。アンジェラ・アキが楽曲提供し、編曲とプロデュースには今回の音楽監督である武部聡志が参加。今の望海の心境や想いを受けてアンジェラが作詞作曲したもので、不安や閉塞感に苛まれ、光を失いそうになる中で、生きているという当たり前の奇跡に希望を見出していく楽曲だ。
「偉大なるおふたりにお力をお借りして、この春に新たな一歩を踏み出せたことを本当に幸せに思います。去年の秋頃、私の大切な場所で、あまりにも悲しいことが起こり、色々と考える日々が続きました。今、もうそこに戻ることはできないけれど、かつて私も確かにそこに居て、関係がないわけではない。その頃から抱えたままのどうしていいかわらかない気持ちや、今一番根底にある想いを、まとまらないまま箇条書きにしてアンジェラさんにお渡ししました。アンジェラさんが共感したり感じてくださったことに、アンジェラさんご自身の想いも乗せ、みなさんに共感していただける音楽になったらと願う中で『Breath』は誕生しました。生きていると本当にいろいろなことがあり、何も考えずに幸せに毎日を暮らせるなんてことはありえない。そんな中でこの曲が、ほっとできる、“自分に帰れる”曲になったらいいなと願っています」自身に、そして客席の一人ひとりに語りかけるような素直な歌声は、望海の飾らないまっすぐな想いが込められているからだろう。この先の人生で立ち止まりそうになったとき、この曲が、“自分に帰れる”励ましの曲として、聴いた人それぞれの歌となって寄り添ってくれるに違いない。

そして本当のラストソングは「Your Song」。“君の歌だって言っていいんだ”“言葉に想いを込めたから”。そんな歌詞が、そのまま望海のメッセージのように聞こえる。それはこのコンサート自体にも感じたこと。初舞台から20年間の感謝や喜び、懐古に希望、迷ったり悩んだりしながら身につけた強さや優しさ、慈愛の気持ち…望海のさまざまな想いが、そのメロディ、その歌詞、その響きからひしひしと伝わってきて、胸が熱くなった。

《囲み取材》
初日前のゲネプロの後には、報道陣に向けた囲み取材もおこなわれたので、その様子もお届けする。

──今回のコンサートの見どころや選曲について教えてください。

まず春に開催するということだったので、私にもみなさんにも素敵な出会いがあったらいいなという想いを込めさせてもらいました。私はここまでにコンサートを4回やらせていただいていますが、宝塚在団中にやった1回目がコロナ禍が始まった頃で、当時は1席ずつ客席を空けて声も出せない状況でした。そこから少しずつ光が見えてきて、今回は、この数年間で知らず知らずのうちに心に凝り固まってしまっていたものを、ちょっとでも解放していただけたらという想いで、テーマを“五感の解放”にしています。いい感情だけでなく、怒りだったり悲しみだったりもこのコンサート中に出してもらえたらと想いながら選曲していきましたが、最終的に歌いたい歌になりました(笑)。
歌いたい曲となったときに一番多いのがミュージカルの楽曲でしたが、今回はそれだけじゃなくポップスや海外の曲など、いろんなジャンルのものを歌い分けられたら面白いかなと思って、入れさせていただいています。どの曲にも思い入れはありますが、みんなで盛り上がれる「お祭りマンボ」や「Hound dog」などのエネルギッシュな曲は、会場一体となってみんなで汗をかけるんじゃないかと楽しみにしています。

──苦労したことは?

一番は歌詞ですね(笑)。歌詞を覚えるのが毎回大変です。演出の桜木さんからは、「歌詞をモニターで出そうか?」と言われたんですが、皆さんの顔を見ながら歌いたいと思って。また、歌って踊るシーンもあるので、エネルギーを維持して歌いきるというのも、苦労したところだと思います。でも稽古は楽しくて、振り入れは1日に2〜3曲あったんですが、よく覚えたなと(笑)。

──新曲の「Breath」についても伺えますか?

まだ反応がわからないので、どうだったんだろうという気持ちと、初日のお客様の前でどんな反応が返ってくるのか楽しみではあります。曲に込めた想いは、初日にきちんと自分の言葉で、劇場に来てくださったみなさんにお伝えしたいと思っています。でも、どんな環境にいる人でも、生きていればいろんなことがあって、楽しかったり喜んだりする瞬間よりも、悲しかったり虚しかったり孤独だったりする時間の方が多いんじゃないかと思うんです。でもそんなときでも、今というものがあって未来につながるし、過去があって今があるわけで。今の自分というものをしっかり抱きしめてあげられるのは、自分自身しかいないとも思うし。そういういろんな想いをたくさんアンジェラ・アキさんにお伝えして、そこから生み出してくださった曲です。はじめてデモを聴いたときに、新鮮な空気で心が満たされるような気持ちになり、しばらく無音のまま余韻だけで、自分の内側と向き合う時間を過ごせたんです。この曲を聴いてくださる皆様にも、本来の自分に立ち返れるようなものになればいいなと思っています。

──アンジェラさんから「望海さんの心深くにあるものを受け止めて、その想いに寄り添えるような楽曲をめざしました」とのコメントをいただいていますが、とくに思い入れのある部分は?

全部なんですが、「なにを目指して走っているのゴールのないレースで」の部分はとくに刺さりました。ふと自分に立ち返ったときに、なんでこんなに何かに追われるように必死でやっているんだろうと思うことがあって。私が伝えたそういう想いを、こんな心に刺さる言葉にしてくださったんだと思いました。また最後の「生きてるそれだけでいいんだ自分をそっと抱きしめてみる」という部分は、当たり前かもしれないけれど、なかなかできなかったことでもあって、それを歌った瞬間に心が震えました。

──全国ツアーの開幕、メジャーリリース第1弾新曲配信について、あらためて手応えや意気込みを教え
てください。

周りのみなさん素晴らしいメンバーと、コンサートができるのが嬉しいし、早くみなさんに見ていただきたい。手応えを感じるのは初日が始まってからだと思うので、数時間後の初日に向けてさらにブラッシュアップして、とくに歌詞が抜けないように準備したいです。やればやるほどいろんな発見があるだろうし、土地土地での出会いもあるだろうし、楽しみにしています。

──前回のコンサートとの違いは?

前回はストーリー仕立てになっていたので、ヒカリさんを通して望海さんを見せているところがあったんですが、今回はそうじゃないので。あと前回も『エリザベート』の曲を歌ったりはしていますが、今回は宝塚時代にやった作品の曲を歌ったり踊ったりしているのが違う部分かなと思います。

──歌詞に苦労されているとのことですが、覚え方はありますか?

ひたすら書く(笑)。書いて覚えるのと、何回も唱えて覚えるのとでやってます。

──『Hello,』に絡め、最近あった出会いは?

『Hello,』のメンバーです。バンドのみなさんは、キーボードの園田さん以外は前回の『Look at Me』と同じですが、ダンサーの方々とは初。2月末にお会いしたのですが、みなさん個性があり素敵な方々ばかりです。

──全国を回るにあたって、公演以外で楽しみにしていることは?

意外と公演期間が短いので、ピンポイントで行かないとどこにも行けない気がして、どこに行ったらいいか悩んでいます。あと、大阪公演のSkyシアターMBSは、新しい劇場で初めてですし、見に来られる方も初めての方が多いと思うので楽しみです。

──新生活の時期でもあり、今新しく始めたいことはありますか?

自転車に乗りたいと思っています。昔は乗っていたけれど10年くらい乗ってなくて、東京に引っ越してから乗ってる人を見かけるので、ほしいなと思っています。稽古場が近いと自転車で来る方もいるので、それを見ていいなと。体も動かせるし、風が気持ちいいですし。

──今後は歌手と女優の二刀流で?

二刀流で(笑)がんばっていきたいです。二刀流って難しいですけれど、ふたつやるからこそ見えてくるものもある。今は舞台をやっているからポップスが難しくて。でもポップスを歌うことで、ミュージカルでの気づきもありますし、新たな喉の筋肉も手に入れられるんじゃないかと思っています。

──男役スイッチを手に入れて、もう照れはなくなりましたか?

男性がいる中でカッコつけるのってなかなか難しいなと思っていたんですが、いざ音楽がかかって踊ると滾るものがあって。歌うより踊る方がワクワクするのを今回感じました。とくに「摩天楼のジャングル」は踊っててすごく楽しかったです。このスイッチは持ち続けてたまに点けられたらいいですよね。今後もいろんなスイッチを手に入れて、使い分けていけたらいいですね。

【公演情報】
望海風斗ドラマティックコンサート『Hello,』
演出・振付:桜木涼介
音楽監督:武部聡志
出演:望海風斗
井上望、碓井菜央、加賀谷真聡、神谷直樹、齋藤 駿、仙名立宗、中道杏菜、半山ゆきの(五十音順)
ゲスト: 朝夏まなと 大阪公演4月25日(木)13:00公演/18:00公演
●2024/3/20~25◎東京 日本青年館ホール
●2024/3/30・31◎福岡 キャナルシティ劇場
●2024/4/20・21◎愛知 東海市芸術劇場大ホール
●2024/4/24~28◎大阪  SkyシアターMBS
〈料金〉東京 S席11,000円 A席7,500円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈料金〉福岡・愛知・大阪 11,000円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈チケット取扱〉ローソンチケット、チケットぴあ、イープラス
〈お問い合わせ〉ワタナベエンターテインメント 03-5410-1885(平日11:00~18:00) 
〈公式サイト〉https://nozomi210.com/hello/