
ちょっとゆっくり過ごしています。
秋に予定していた2本の舞台(演出の舞台と、脚本の舞台)がなくなってしまい、K A A T「子どものためのうつくしい国」が終了した8月下旬から、年内の表舞台が早くも終わってしまったのでございました。
そういえば、似たような設定の男の物語を書いたなあと(新国立劇場「りんごが落ちる」)、奇しくも現実となってしまった形か。なにくそう。
まあそんなこともあるさ。
その分、息子と遊べる時間もできてよかったのだが、プールへ行っては溺れる心配をし、ニュースでは毎日のように海や川の事故に心を痛める。ネパールやグランドキャニオンの洪水には愕然とするばかりで、各地での線状降水帯の凄まじさに慄いている。そして、これはもはや雨季と言っていいほど雨は続き。
水没する車をテレビで見ながら息子が呟いた「どこが高くて低いか知っておく必要あるよね」。
なるほどおっしゃる通りだ。
小二とは言え、まだ、モーツァルトを「モッツァルト」と言う年頃である。モッツァレラじゃないんだからって。電子レンジを「レンジ電子」と言う、そんなかわいい年頃である。
自分の街の高低を知っておくのはとてもいいことだ。
というわけで、夏休みの自由研究として、独自のハザードマップを作ることにした息子だった。自分の足で、どこが高いか低いかを体で知って、地図に反映させようってわけだ。
春に新調したちょっとまだ大きすぎるマイチャリになんとかまたがって、いざ出発。
自転車の方が、より傾斜がわかりやすいということらしい。強く漕げば登り傾斜ということだし、スムーズに漕いでいればそこは平地で、漕がなければ下り傾斜というわけだ。
なるほどいいじゃないか。
私自身、改めて意識すると、意外なところが登りだったり、下りだったりして、結構勉強になったりした。
ついでに渋谷まで足を伸ばしちゃって、PARCOで下田昌克さんの個展まで行っちゃって、かなりの広いエリアのハザードマップを作成していた。
ヘトヘトになった分だけ(父は電動チャリだが、子は普通チャリである)、体で街の高低を知れたんじゃないだろうか。
学校が始まり、自由研究を提出した数日後、息子の帰宅時間に、よくある短時間のドシャ降りに見舞われた。
息子は色々と高低のことなどを思いながら歩いているかな、と思っていたら、見事なビシャ濡れで笑顔で帰ってきた。
「傘を忘れたよね」
そうだね。傘は大事だね。
そろそろ秋ですかね。
著者プロフィール

ノゾエ征爾
のぞえせいじ○1975年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の1999年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。2011年の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。
▼▼前回の連載はこちら▼▼
https://enbutown.com/joho/2026/08/19/nozoe-161/





