むしろこっちが人生相談したい気持ち満々のコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。

いま私は、北九州から羽田に向かう空の上で、このコラムをしたためています。
空の上でコラムを書くのは初めてですが、どうですか? 何か空っぽさ、感じますか?

80年代アイドル世代としては、飛行機から夜景を見下ろすと、必ずと言っていいほどラビザミステリが脳内に再生されます。中森明菜ちゃんの「北ウイング」です。
その後なぜか、杏里「悲しみが止まらない」が、さらにH2O「想い出がいっぱい」が再生され、もういいかげん別れの歌はよかろうもん! と、福岡土産の名称が出てきたあたりで、機内サービスのドリンクが配布されはじめます。

そして毎回必ずといっていいほど、アップルジュースを頼んでしまう…私の飛行機移動は、北ウイングとアップルジュースの呪縛から離れられないのです。

そうしたためながら、アップルジュースを飲み終わりました。
さて、今回のご相談にまいりましょう。


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のぶえさん、こんにちは。

私は今『ヒトラーを画家にする話』という、役者スタッフともに10代20代30代40代50代60代とバラエティーに富んでいる稽古場におります。
昨今取り沙汰されることの多いハラスメント問題、この現場でも稽古初日は臨床心理士さんをお呼びしてのハラスメント講習から始まりました。
色々なお話を聞きながら、お互いの信頼関係がなければハラスメントになってしまうんだよなあ、と、当たり前のような、はたまた改めて気付いたような思いでした。

この「お互いの信頼関係」というものを1ヶ月程度の稽古でつくり上げるためにはどうしたらよいと思われますか?

あと、現場には見目麗しい若者がたくさんいるのですが「カッコいい~」とか「かわいい~」はルッキズムやハラスメントに抵触するのかと思うと何も言えず変なストレスです。はあ。

こんな年長組の私にアドバイスをお願いいたします。

柿丸美智恵さん(俳優)
 
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柿丸さん、最近めっきりお会いできていませんね…久しぶりに酔った柿丸さんを拝ませていただきたい気持ちでいっぱいです。

お会いできていないうちに、めっきりハラスメントに敏感な世の中になってしまいましたね。

私も前回の公演が、初めましての方々ばかりで、さらに私が一番年長者だったため、稽古後に「ちょっと公園で、ビールを一杯飲んでいきませんか?」と誘うことさえハラスメントになってしまうのかもなぁ…と、SNSでそれとなく「私は時々公園で勝手にやってます」アピールをし、一杯付き合ってくれる方を待つ…というなんとも回りくどくも寂しい日々でした。

ひとり公園でビールを飲みながら、ああ今後ますます後輩ばかりになって、私からは誰も誘えないまま、こうして公園でひとり人生を終えていくのだわ…と、私と同じく一杯付き合ってくれる人をミンミンと探すオスのセミの鳴き声を聞きながら、思ったものです。

ハラスメントというのに敏感になることはもちろん大切だとは思うのですが、柿丸さんもおっしゃるように、どこまでがコミュニケーションで、どこからがハラスメントになってしまうのか…本当に相手との信頼関係次第なところがあります。

とはいえ、信頼関係なんてもんは可視化できるものではありませんし、そんなにすぐ構築されるものでもありません。
しかし逆に言えば、信頼関係を可視化することによって、構築を早めることができ、ハラスメントという状況を避けながらコミュニケーションを深化させることができます。

ここまで書いた時点で、めんどくせぇ世の中だぜ!!!!! と吠えかけましたが、吠えたら吠えたで「コラムハラスメントですよ!」と言われそうなので、ぐっと我慢します。なんだよ、コラムハラスメントってよ。

まずは、信頼関係の可視化です。
よく「武器を持っていません」とアピールする際に、両手を挙げるしぐさをします。
例えばあのしぐさを、「私はあなたと信頼関係を築いていきたい気持ちがありますので、一歩近づかせていただきます。ハラスメントと感じてしまったらごめんなさい」という気持ちの表現手段として使います。

何もせずに、「〇〇くんは、ほんとかっこいいよね」と言った場合と、両手を挙げながら「〇〇くんは、ほんとかっこいいよね」と言った場合、両手を挙げるしぐさによって、距離感を保って冷静に気持ちを伝えることができます。

ここまで書いた時点で、めんどくせぇ世の中だぜ!!!!! かっこいいんだからかっこいいでいいじゃねぇか!!!!! と吠えかけましたが、吠えたら吠えたで「ただのハラスメントですよ!」と言われそうなので、ぐっと我慢します。なんだよ、ただのハラスメントってよ。

インベーダーゲームというものが、70年代に流行りましたよね。
両手を挙げる生物(?)が撃たれていくゲームです。
あのような世の中になるのですよ…結局両手を挙げて伝えたとしても、受け取る側が「ハラスメントだ!」と感じてしまえば、それは「ハラスメント」…伝える側がコントロールするにも限度があります。

こうなったらもう、なるべくバカみたいに伝えていけたらいいのではないでしょうか。

幸い柿丸さんはじめ、演劇界のみなさんは演技することを得意としています。
「原須 綿斗(はらす めんと)」という架空の人物をつくりあげ、もしかしたらハラスメントとして受け取られてしまうかもしれないな…ということを言う際「原須 綿斗ですが、〇〇くんは、ほんとかっこいいよね」と原須綿斗として演じながら伝えます。
そうすることによって、伝える側も受け取る側も原須綿斗を介して…ここまで書いた時点で、めんどくせぇ世の中だぜ!!!!! 誰だ、原須綿斗って!!!!! と吠えかけましたが、吠えたら吠えたで「原須綿斗へのハラスメントですよ!」と言われそうなので、ぐっと我慢も限界だよ!!!!!

以前、ハラスメント防止コンサルタントの資格をとられた方と、シュミレーションさせていただく機会がありました。
例えば、私が何らかのハラスメントを受けているという想定で、エチュードのように質疑応答していくというものです。
全くの空想でお話しするのも無理があるかと思ったので、いままでに経験したいまの時代であったらハラスメントと言われるであろうことを土台に、お話ししていったのですが、それもハラスメントの可能性があります、それもです、それも…と指摘され続けていくうちに、うわぁ…この先、演劇界は豊かな演劇がつくっていけるのだろうか…と、感じた部分もあります。

もちろん、誰かがハラスメントだと感じてしまうような環境はない未来を目指したいですが、画一的に何もかもがハラスメントとして捉えられてしまうと、演技で人に触れることすらひとつづつ許可が必要になっていきます。私個人としては、それは豊かな未来ではないなぁと感じてしまいます。

ちょうどこのタイミングで、阪神タイガースが18年ぶりに優勝したというニュースが入ってまいりました。
優勝に導いた岡田監督の名言によると、「“当たり前のこと”を“普通にやる”」ことが大切なんだそうです。沁みます。

相手がどう感じるかという“当たり前”の思いやりを、誰もが“普通に”実行していたら、ハラスメントという問題も起こりにくくなるのでしょうね。
「ハラスメント」という言葉ではなく、「アタリマエフツウ」という名称にしたらいいのに…。

柿丸さんともはやく、当たり前に普通に飲める日がくることを願っています!
まずは客席から拝見できるのを楽しみに。観客席から「柿丸ー!素敵だぞー!」と叫ぶ際には、両手を挙げます。制作さんによって場外に連れ出される時も、両手を挙げ続けることでしょう。

■ラッキー待ち受け

フリー素材の写真をダウンロードしました。
原須綿斗さんだと思うことにいたしましょう。
しかし、、年上としての現場が増えてきた昨今、両手を挙げることもなく、原須綿斗に頼ることもなく、豊かなお稽古と本番を過ごせる環境に少しでも尽力できればと思います。

柿丸美智恵さんの今後の予定

タカハ劇団「ヒトラーを画家にする話」
脚本・演出:高羽彩
2023年9/28(木)~10/1(日) 東京劇術劇場シアターイースト
詳細 →http://takaha-gekidan.net/2023/06/30/ヒトラーを画家にする話/

ロ字ック「剥愛」
脚本・演出:山田佳奈
2023年11/10(金)~19(日) シアタートラム
11/22(水)~23(祝・木) 穂の国とよはし芸術劇場PLATアートスペース
11/25(土)~26(日) 扇町ミュージアムキューブCUBE01
詳細 →http://www.roji649.com

namu 第一回公演
2024年1/12(金)~14(日) 下北沢OFF・OFFシアター
作・演出:名村辰
出演:江原パジャマ (パ萬)/柿丸美智恵/青山美郷/松本哲也(小松台東)
詳細 → 「x」アカウント namu (@playnamu)
https://x.com/playnamu?t=PYQz8AhIX3bYApfLgGBaLg&s=16

著者プロフィール

池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。

出演情報

【舞台】
「無駄な抵抗」(作・演出:前川知大)
2023年11月11日(土)~26日(日) 世田谷パブリックシアター
※11月21日(火) 19:00終演後ポストトークに池谷のぶえも登壇
2023年12月9日(土)~10日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
https://setagaya-pt.jp/stage/2140/

【テレビ】
Eテレ アニメ「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」
毎週金曜 18:40~ / 再放送 毎週土曜 17:45〜
声:銭天堂の店主・紅子役
https://www.toei-anim.co.jp/tv/zenitendo/

【テレビ】
Eテレ「みいつけた! 木曜日」再放送 2023年9月21日(木) 午前7:30〜7:45 ・再放送 18:25〜18:40
https://www.nhk.jp/p/miitsuketa/ts/P81683LLKY/

【テレビ】
CS衛星劇場 ナイロン100℃ 47th SESSION「イモンドの勝負」再放送 2023年9月23日(土) 17:00〜20:15
(2021年11月 本多劇場にて上演の舞台公演)
https://www.eigeki.com/program/19855

【テレビ】
テレビ東京 ドラマ25「こむぎの満腹記」 2023年9月29日(金) 24:52〜
https://www.tv-tokyo.co.jp/komugi_manpuku/

【映画】
「うかうかと終焉」(監督・脚本・原作:大田雄史)
2023年10月13日(金) テアトル新宿、今秋 京都・出町座ほか全国順次公開

【トークイベント】
to R mansion「走れ★星の王子メロス」アフターイベント『メロスの部屋』
2023年10月20日(金) 19:00の回終演後 吉祥寺シアター
http://tormansion.com/2023hoshimeroticket

【WEBマガジン】
日本の旅侍「旅と城」vol.7 長野県諏訪市
https://www.tabi-samurai-japan.com/travel-castle/007/

【音楽配信】
「ハナミズキ feat. 一青窈(Cover)」
2004年に発売された一青窈「ハナミズキ」を演技と歌の大魔改造カバー
出演:池崎浩士・池谷のぶえ
脚本:下亜友美・池崎浩士
販売:2023年10月1日(日) 各音楽配信サイトにて販売
https://linkco.re/aUhe6D3u

【コラム】
福岡のエンタメ情報誌 シアタービューフクオカ「めずらしく体調のいい日に」
https://tvf-web.com