むしろこっちが人生相談したい気持ち満々のコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。

私事ではございますがこの度、第31回読売演劇大賞最優秀女優賞をいただきました。

共に作品づくりに携わった皆様、応援してくださっている皆様、そっと陰から見守ってくださっている皆様、ありがとうございます。

このコラムや、SNSや、いろいろな取材などでも、度々「私はまだ演劇が好きだと言い切れない」みたいなことをとやかく言ってまいりましたが、いよいよそんなこと言ったら叱られてしまうのではなかろうか…というところまで来てしまいました。

正直、早く大声で「演劇大好きー!」と言ってみたいのですよ。
しかし、「お父さん大好きー!」「お母さん大好きー!」みたいなことと似ていて、そりゃ大事だろうけど、ほら、いろいろあんじゃない…みたいな立ち位置です、演劇。

ですがこのような機会をいただくと、自分自身はなんだかよくわからないような状況にもかかわらず、選出してくださった方々をはじめ、周りの方々や思いもかけない方々が祝福してくださったり、喜んでくださったり、というのを肌で感じ、
たくさんの方々が見守ってくださっていたんだなというのを実感させてもらっています。

「のぶえ、そういうことにちゃんと気づけよ!」賞なのではないかと思ってしまうくらいです。
はい、のぶえ、がんばって気づきます。

さて今回はそんな、第31回読売演劇大賞優秀作品賞、優秀演出家賞、最優秀女優賞に導いていただきました、こちらの方からのご相談です。

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『寸劇の館』につぎ、『人生相談の館』にまでお邪魔させてもらっていいのでしょうか。お招きいただきありがとうございます。

私の悩みは舞台の現場でのお弁当選びについてです。美味しいお弁当を手配をしたいけれど予算のことも考えなきゃいけない。そんな現場が次から次へとやってきます。
仕込み期間が長い!お弁当代は高騰!差入れのお弁当の手配までこっちにふってくる!こんなにも劇をやっているのになぜ下北沢にはお弁当屋がない!?
そんな「御弁当選無限ノ地獄(おべんとうえらびむげんのじごく)」を楽しく過ごす方法はないでしょうか。ぜひアドバイスいただけますと幸いです。

半田桃子さん(momocan・制作)

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半田さんは、「momocan」という会社を運営されています。

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ご挨拶

はじめまして。株式会社momocan(モモカン)です。

クリエーター・俳優とより風通しのよい環境での創作活動、
そして多岐に渡るジャンルの作品を幅広く世に送り出せるチームを目指し

小劇場運営のサポートから商業演劇の制作進行まで多方面で業務を担っています。

舞台制作とマネージメントを並走して行うことで、

日本のカルチャーを牽引する俳優やクリエイターを

応援・輩出していくことが、大きな目標です。
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と、会社のHP冒頭のご挨拶にもあるように、今回受賞したEPOCH MAN「我ら宇宙の塵」のプロデュースを手掛け、その作品の作・演出・美術でもある小沢道成さんのマネージメントも手掛けていらっしゃいます。

そんな半田さんの日々のリアルなご相談。
正直、私は「弁当は演劇だ」と思っている派です。
派と言いましたが、だれも仲間がいないのでこれから広めていかねばなりません。

いつか実験してほしいのです。

ほぼほぼ同格の役者たちを2グループつくり、一方にはただ食べらればいいという気持ちの伝わるまるでテンションが上がらないお弁当、もう一方にはこのお弁当によって少しでも心身の栄養となりますようにという気持ちの伝わるお弁当を出しつづけ、パフォーマンスがどれほど違うかという実験です。

ぜーったい、後者のパフォーマンスが上がると思うのです。
あくまで、質や金額の豪華さではなくて、気持ちが伝わるかだと思います。

なので、急な来訪のことも予測しながら必要なお弁当の数を数え、予算とすり合わせ、アレルギーの配慮をし、お弁当屋さんに手配し、手配したものの本当にちゃんと予約できたのか多少ドキドキし、本当に届いてやっとホッとし、なるべくあたたかいうちにみんなが食べられたらいいなと祈り、「おいしかったです、ごちそうさまでした」と言ってくれる数割くらいしかいない役者やスタッフに幸あれと祈り、いただいているお弁当さまに対して何も感謝のない人々には「おまえの才能もそこまでだな」と心の中で刻印し(by池谷のみ)、決して美しいとはいえない生ごみや弁殻を手を汚しながらせっせと片付け、また明日のお弁当を手配する…泣けます。

そんな制作さんたちのために、かつては演劇と弁当を発展させていこうという劇団がいたのをご存知ですか?
そう、演劇弁当猫ニャーです。

演劇界で一番の弁当を、弁当界で一番の演劇を…を企業理念に活動しましたが、1年ほど。そりゃ、無理でした。

演劇界のことをよくわかっている方、もしくは、その後わかりたいと思ってくれる方が、下北沢近辺になるべくリーズナブルな、多少のボリュームある、お弁当屋さんを経営してくれたらこんないいことはありません。
バイトをしながらお芝居をしている方だってたくさんいます。
そうした方々が、思いやりながらシフトを組める場所があったらどんなに素敵でしょうね。

ひとり、暇そうにしている男性を知っています。
ブルー&スカイ先生です。

かつて、「話がある」と劇団員たちを公民館の一室に集め、「ああ、いよいよ劇団解散なのかな…」と思っていたら、「弁当屋をやろうと思います…」と、語りだした男性です。

いまこそ、さすらいのお弁当手配師として働けば生活費だって稼げるのに…と思いますが、とにかく食に興味がない…じゃあなんで「弁当屋をやろうと思います…」なんて言いやがったんだ! 

ということで、ブルー&スカイ先生はあまりあてにならないので、これから具体的にできることと言えば、演劇人たちのお弁当ネットワークを可視化できるようなプラットホームをつくれないでしょうかね。

店名、営業日時、予算、種類、情報などなどをまとめたリストを、実際使った制作の方々が書き込み更新していける場所があったりしたら、お互い助け合えあるのに、と思います。

常々、演劇界、小劇場界も、縦横のつながりが脆弱な気がしています。
もちろん、個々の表現にプライドを持ち進まねばならない環境同士ですから、守りたいものもたくさんあるとは思いますが、それこそお弁当情報、使い終わった舞台装置、小道具、衣装…シェアしたりリメイクしたりどんどんしていけたら、結果的には携わる方々のギャラも増やせるし、チケット代を少しでも安くすることができる。

とはいえ、そんなことを先頭きって始められるほど時間のある方がいない。
いや、ブルー&スカイ先生がいるけれども、いない。

そいういうことに才能と興味のありそうな方を探していきませんか?
というか、そういう場所が必要だということをいろんな方々が声にしていけば、どこかから救世主が現れるかもしれないですね。

言霊は大事です。
まずは、美味しかったり、リーズナブルだったりしたお弁当を、どんどんリスト化していきましょう!

お弁当は演劇です!

■ラッキー待ち受け

劇団がお弁当屋時代だった頃の記念グッズの割りばしです。大量にあります。化石です。
いまこそ、こんなとち狂った方々がまた出て来てくれたらと、願わずにはいられません。

半田桃子さんの今後の予定


一色洋平×小沢道成「漸近線、重なれ」
演出・美術:小沢道成・一色洋平
脚本:須貝英
音楽:オレノグラフィティ
日程:2024年4月1日(月)~4月7日(日)
会場:新宿シアタートップス
詳細 → https://epochman.com/zenkinsen.html

momocan
詳細 → https://momocan.co.jp/about/

著者プロフィール

池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」(後の「演劇弁当猫ニャー」)の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。

出演情報

【テレビ】
Eテレ アニメ「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」
毎週金曜 18:40~ / 再放送 毎週土曜 17:45〜
声:銭天堂の店主・紅子役
https://www.toei-anim.co.jp/tv/zenitendo/

【映画】
「52ヘルツのクジラたち」
監督:成島出
2024年3月1日(金) 全国公開
https://gaga.ne.jp/52hz-movie/

【テレビ】
衛星劇場
「無駄な抵抗」
2024年3月31日(日) 16:00~18:30
(2023年11月 世田谷パブリックシアターにて上演の公演)
eigeki.com

【Podcast】
ホワイエ Podcast「池谷のぶえとブルー&スカイのきっとフォーエバー」
毎週金曜日17時より配信
配信アプリ:Podcastアプリ(Apple Podcast、Spotify、amazon music、Google Podcasts、Castbox) https://podcasts.apple.com/jp/channel/%E3%83%9B%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%82%A8-podcast/id6470627311

【コラム】
福岡のエンタメ情報誌 シアタービューフクオカ「めずらしく体調のいい日に」
https://tvf-web.com