劇団☆新感線がほぼ7年ごとに再演を繰り返してきた作品の最新作にして最後の上演となる「髑髏城の七人 LAST STAND」の東京公演が間もなく始まります。12月まで上演したら、年を越した来年には旅公演もありますよ。
さて、間もなく初日という事は今は稽古も大詰め、つまり纏める頃です。稽古期間はカンパニーによってそれぞれですが、上演時間が短めの小劇場などでは三週間程度、上演時間が長くてやるべき事がいっぱいある新感線の場合では一ヶ月半にも及ぶ稽古となります。
いずれの場合でも、稽古の終盤に行われる特別な稽古が今回ご説明したい「通し稽古」なのですよ。
演劇の稽古の場合、もちろんカンパニーや演出家によって変わりますが、まあだいたい座ったまま台本を読む「本読み」を何度かやったあと、実際に動きながらシーンを作っていく「立ち稽古」に移ります。第一場から始まって、第二場、第三場と順番にシーンを作り上げていって、何日も掛けて最後まで行ったら、また第一場に戻ってより練り上げていくのです。アクションや歌やダンスがあればその稽古も行い、シーンの中に入れ込みながら組み上げていきます。
そんなふうにシーンごとに個別に稽古しながら、全体の構成を固めていくのです。場合によっては、後半の仕上がり具合から遡って前半のトーンを修正したりもします。そうやって各シーンの精度を上げていき、固めていくうちに月日は過ぎ去り、稽古期間も残り数日という事になってしまいます。そこで行われるのが満を持しての「通し稽古」という訳なのです。
通し稽古ではその名の通り、最初から最後まで通して稽古をします。つまり上演される時と同じように全シーンを一気に通すのです。それまではシーンごとに煮詰めてきましたが、通すことでそれらが有機的に組み上がり、一つの物語として完結するのです。それまではバラバラだったものが絡み合いながら立ち上がり屹立する感動の瞬間なのです。
これがねえ、感動的でありながらも大変なのですよ。何しろ通し稽古ですから止まりません。今まではシーンごとに休憩が入っていたりしましたが、止まらずに走り続けなくてはならないのですよ。次のシーンは何だっけ? 出るのはどこからだっけ? 持って出るべき小道具は何だっけ? あっ次のシーンへは舞台裏を走らないと間に合わないんだったすみませんちょっと通ります!
なんだかもうバタバタです。激しいアクションでシーンが終わった直後、次のシーンで長々と台詞を言わなければならないのに息が上がって上手くしゃべれません。なんて事も起こる訳です。これも通すからこそ判ること。体力的に大変です。これまではシーンごとに休めていたけど、通しだから休めません。とにかく我武者羅に走り抜けなければならないのです。
大道具や小道具の移動なども実際に行われますから大騒動です。もちろんシーンの繋ぎなども稽古していますしシミュレーションもしておりますが、実際に通してみてから判ることなどもたくさんあるのです。
ことほど左様に通し稽古というのはまあとにかく大変なのですが、とても重要で必要な稽古です。通す事によって全体像が出演者やスタッフに共通認識として確立しますし、新たな問題点を発見することもできます。通し稽古によって問題点を洗い出し、修正し、流れを整える。場合によっては台詞や演出を変更する。それほどまでに重要なのです、通し稽古は。
だから通し稽古は二回はしたい。いや三回、いやいや四回、できれば五回はしたい。しなきゃ駄目でしょ。けれども稽古期間は限られています。修正稽古の時間も取りたい。アクションの練度ももっと上げたい。様々な思惑が交錯しますが時間は有限です。ですから稽古時間を管理する演出助手の責任は重大なのですよ。
かつて、劇団☆新感線でも劇団員がみんな若かった頃、やりたいことを盛り込みすぎて稽古時間が足りず、初めて通したのが本番直前のゲネプロだった、なんてこともありました。ナイショですよ。でも今では優秀なスタッフさんについて頂いているのでそんなことはありません。さて、11月14日の初日ではどうなっているでしょうか。どうぞお楽しみにしながら劇場にお越し下さいませ!

本文とは関係ありませんが、先日散歩に行った東麻布商店街のバナーが可愛かったのよ

粟根まこと
あわねまこと│64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。
【出演予定】
劇団☆新感線「髑髏城の七人 LAST STAND」
【東京公演】
11/14〜12/25◎新橋演舞場
【長野公演】
2027/1/21〜24◎ホクト文化ホール
【金沢公演】
2/8〜14◎金沢歌劇座
【大阪公演】
2/25〜3/11◎フェスティバルホール





